マンションの仕組み(第四十四歩)
■花鳥風月 / マンションの植栽図面
マンションの分譲事業者は、マンションを分譲後1年以内に当該マンションの管理組合の管理者等が選任されたときは、速やかに、マンションの管理者等に対し、当該建物又はその附属施設の設計に関する図書を交付しなければなりません。
実際に設計図書を渡される時、新築分譲マンションで最初に選任(くじ引き)された第1期の管理組合の理事長・副理事長の方の多くは建築の専門家ではないと思います。設計図書などの引渡し書類は専門性が高く、何冊もあり膨大です。そのため、短時間で確認し、設計図書の交付に関して儀式的に受領印を押すことになり、ご自分が購入したマンションの内容が理解できないままになってしまいます。
ですが、その後でも、第1期以降の理事会の皆さんで勉強しながらお住まいになるマンションと設計図書の相違点を検証してください。その結果、マンションへの理解が深まり、違いが見つかり、その違いがマンションに住むことに支障となるのならば、その効果がマイナスであるのならば、分譲事業者に問いただしてください。その作業がその後のマンションという建物の管理において重要なポイントになります。
その作業を面倒くさがって行わないと、区分所有者が主体的に関与しないために、数年後になって、任せっきりにしてきた管理会社との間に軋轢が生じる原因になります。
設計図面には土木や建築やプラントなど様々な分野があります。さらに建築の図面の中にも、意匠・構造・電気・空調・給排水衛生そして外構(植栽)などがあり、それぞれ専門性が高いために各設計者は他の分野の図面には介入しません。ザックリ言うと、自分の専門分野以外の図面は書けません。このように多くの専門分野の方が集まってマンションの設計図書ができるのです。
団地型マンションの様に敷地が広い場合は、外構(植栽)の専門家が図面を書きます。よく言われる「ランドスケープデザイナー」です。花木などの植栽の配置や四季を通しての見せ方、公園や遊歩道や駐車場などの動線への誘導、照明、目隠しや防犯・避難経路などは、マンションを販売する上での重要なポイントなので、大手のディベロッパーは外構図面を特別に「ランドスケープデザイナー」に発注します。
しかし残念ですが、建築図面を見ても、外構(植栽)図面を見る方はほとんどいません。新居での生活環境を整えて、仕事と子育てが第一なので、花鳥風月を愛でる余裕が無いのはわかりますが、花木が咲く前に樹木の名前と咲く時期と、その花の姿がわかれば、家族との新生活に楽しみが増えます。
マンションを建設する側の人間にも、基礎や躯体、内装や外装などの得意分野がありますが、得意分野ではないから知らない、分からないとは言えないので、多くの情報を収集して勉強します。
ここでもマンションを設計する各専門分野の人(設計者)と、建設する人(施工者)というように専門性が別れます。しかし、この2者がバラバラではマンションはできません。そのためこの2者は絶えず会話(会議)をしてマンションを造り上げていきます。
マンションの設計図書が施工者に渡されると、建設工事には工期があるので、施工者はものすごい勢いですべての設計図書に目を通して理解し、特異点を抽出し、安全で効率的でより良い建設方法を考えます。そして基礎工事の頃には、施工者の頭の中ではマンションの建設は、ほぼ終わっています。
外構(植栽)図面で検討する大事なことは、雨水の流れ方とその処理方法です。雨水はその敷地内で処理するのが基本なので、敷地の勾配や配管ルートなどを考えて、大雨の時に流れが集中せず、流量を分散させて、住戸やその付属施設、外構歩道などが浸水しないように検討する事が重要です。
次回は、冬になるので、マンションのガラスについて説明します。
(一級造園施工管理技士/マンション管理士 福森 宏明)