マンションの仕組み(第四十六歩)

■花鳥風月 / マンションの土木工事

マンションは建築工事ですが、土木工事がなければ成り立ちません。その理由は簡単に以下になります。
建築物の敷地は、これに接する道の境より高くなければならず、建築物の地盤面は、これに接する周囲の土地より高くなければなりません。[建築基準法第19条(敷地の衛生及び安全)]
設計図書の敷地図には、マンションの棟ごとの配置を考えた基準となる高さのポイントが記載されていて、そのポイントから測量を始めます。建築物の高さは「地盤面」からの高さとなるからです。
この基準の高さから、マンションを支える杭の支持層までの長さを計算して、杭を発注するのです。

土木工事として、敷地内の土地の段差や勾配、駐車場などの外構を考慮して宅地造成が始まりますが、まずは電気・ガス・上下水道・通信などのインフラ工事から進めていきます。なぜインフラ工事からかというと、これらの配管などは地盤面下に埋設されるからです。
昼夜問わず、街中でガス管や上下水道管などの更新のために、道路を掘っている工事を見かけることがあると思います。その工事が終わるとアスファルト舗装で仕上げますが、元の舗装面とは段差ができます。
メインの管から各建物への配管があればさらに枝状に舗装の補修となり、道路がデコボコになります。状況によっては植栽の更新などもあって、歩道もデコボコな状態になります。この道路のデコボコは車が通るたびに騒音・振動の原因になるので、敷地内に道路のあるマンションの場合は先に配管を埋設します。

特に下水の本管はメンテナンスもあるので、マンションの敷地内道路の下に埋設してマンホールを設置します。そして建物や敷地からの排水を敷地外の公共桝(公設桝)に接続するために、勾配を付けて配管するので、マンションとの位置関係よりも高さ(勾配)が重要になります。
もしマンションを建設する工期が短くて、先行で埋設配管ができない時は、建築工事の工程の中で一番工事の進捗に影響の少ない時期に調整して、短期間で頑張って土木工事を行います。

敷地内道路のあるマンションで建築工事より先に土木工事で埋設配管をする理由のもう一つは、マンションの建設工事が本格的になると建設資材の搬入車両で土木工事ができなくなるからです。
マンションは事務所ビルなどと異なり、仕上げ工事が複雑で多いために、工事にかかわる専門工事会社が40社以上になります。マンションの躯体工事(コンクリート構造物)が進み、上階では躯体工事が先行して、下階で内装仕上げ工事が出来るようになると、躯体工事の資材や生コン車だけでなく、どんどん内装材がトラックで入ってきます。敷地に余裕がある団地型マンションでは敷地内道路がありますが、その道路を毎日時間割でトラックが入ってくるのです。躯体工事が終わったと思ったら今度は外装工事が始まって外装材が搬入されます。内装工事では最後にやっと畳が搬入されて落ち着きます。
そのため、マンションの建設工事が本格的になる前に配管を埋設して、地盤を固めて、その上をトラックが通りやすいように鉄板を敷いて工事用道路として使用します。
もし最後に配管工事をすると、受電が遅れてマンションの各部屋からボールを流して排水状況の確認もできず、各種の検査が遅れた結果、公的な検査も遅れてしまいマンションの引渡しが遅れます。

敷地の広い団地型マンションの土地は、先祖代々の農家であった場合があります。今でも郊外に行くとみられる景色として、広大な農地に屋敷林に囲まれた民家があり、農地の各所にポツンとお墓があります。
宅地造成をしていたとき、畑であったであろう場所から複数の墓石が出てきたことがあります。土地を売却する際に持っていけない墓石を埋めて処分したものです。
粗末に扱えないので、地元の神社にお願いしてお祓いをしてもらいましたが、終わった時に神主の方が「今までそこに立っておられました」と言われました時はゾッとしました。

次回は、マンションにおける植栽準備について説明します。

(一級土木施工管理技士/マンション管理士 福森 宏明)