カトー折りの散歩道(第四十八歩)

■読者からの一通のメールに感謝

読者からカトー折りの連載は中止ですかというメールが届いたようである。嬉しくなって、元気が湧いてきたのでさっそく、そのエネルギーを使って、連載を書いてみようと思った次第である。

なぜ、中止と思われたのかは、無理もない、筆者が「進行がん舌癌ステージ4」になったことをここで告げた後に1月分のコラムをお休みをした経緯からすれば、そう感じるのも自然な流れである。この病状を聞いた人の周囲には似たような患った方が帰ってこない事態の場合が多く、実は、本当に心配させてしまったと、ちょっと胸が痛む。だが、場合によっては本当にそうなっては無念という気持ちもあって、病状を公開しつつ、Facebookにも掲載していた。

まぁ、舌癌というのは、見える癌であって、食べる、話す、嚥下するという重要な役目に影響するもの。また発生率は非常に稀なので、私も突然、治らない口内炎は癌かもしれないと内科の先生に言われて、耳鼻咽喉科に見てもらったら、横浜市大総合医療センター病院を紹介された。そのあとは若くて、優しい先生に巡り合って、すぐにお任せしてしまった。怒涛のように検査、入院、抗がん剤点滴投与、いったん自宅に戻り、年明けに舌の右を切除して、大胸筋の筋肉を血管付きで舌まで移動させて再建する手術だったようだ。まるでドクターXの世界。私はICUに1週間、麻酔1週間、手術を2回受けるという凄まじい治療だった。

これまでの日々は、退職後であってもカトー折りのブース出展や講演で楽しく忙しく、めちゃくちゃハードな日々だったが、すべての活動をストップ。仕事も契約を終えて、退職。リセット、どん底に突き落とされた。実は入院する2日前にお墓参りに親戚のところに行ったのだが、のどかな場所に停車した車から置き引きに遭遇して私の財布、マイナンバーカードも入って、銀行カード、クレジットカードも入っていて、蒼白になった。ふらふらになった気分で入院という状況。(今は元通りになりました)なにしろ、ここまで落ちるのかというくらいに落ちた。筋力も落ち、抗がん剤の副作用で内臓の活動もストップ、食事を受け付けず、身体中が痛み、苦しみ、絶食状態かと思えば、手術後の麻酔が切れた後は幻覚ばかり見えてしまい、サディスティックな不思議な世界をさまよい、どれが現実なのかがわからなくなる始末。もう落ちて、落ちて、ふらふらになって考えていたのは、自分が元気なころに入院生活に憧れていたころを思い出した。とんでもない、こうなるんだよとなめんじゃない、もう一人の自分がそこにいた。その彼が私をどんどん引っ張っていった。どうすれば楽になるかを教えてくれた。どうすれば、身体が動くかを教えてくれた。それはモチベーションだった。やる気だった。もう辛くても、少しでも感じないときがほしい、これが望みであって、それには、ナースコールボタンを押して、枕の位置やベッドの傾斜など、または痰を吸ってもらうことなど、あるのだが、そのモチベーションをつくるには、ナースコールボタンを探さないといけない。そのためには起き上がらないとダメだ。この痛い身体に鞭を打って、起こす気力を貯めるには時間が必要だった。覚悟を決めて、慢心の力を込めて、起き上がって、ボタンを探すが、見つからないと、また力が抜けて、考える。もう探すエネルギーはもうない。すると、足がベッドのパイプに当たっていた。それを揺らしたら、すぐに看護師が駆けつけてきた。あー、助かった。

このように今ある自分のエネルギーをどこから調達して、なんのために使うのかを明確にして、それでモチベーションを作り上げて、目標を定めて、行うが、結果は、ボタンが見つかる、見つからないという結果がやってくる。これって、カトー折りと同じ発想なのである。こう折ってみると、紙はくっつくが、こうすると、ダメだよとわかる。まず、行動なのだが、その前にこういう心と頭と身体の取引があるんだよということである。

カトー折りを通して、チャレンジして、それが成功なのか、失敗なのかはあとで判断すればいい。問題はそこではなく、諦めずに目標に食いつき、そのモチベーションを成就させてあげよう。これが次のエネルギーになるのである。その甲斐もあって、2月5日に退院した。転移したはずのリンパ節の病理の54か所のうち、癌はゼロだった。ということで、放射線治療は中止となって、味覚や嗅覚も元気である。それから2週間が過ぎた。徐々にエネルギーを貯めることができて、やっと外部にそのエネルギーを使い、このコラムも書けるようになった。というわけで、読者からの一通のメールをいただき、そこからエネルギーに感謝し、コラムを書くという成果を得ました。(少し長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました)

 

(カトー折り 加藤 祐一)

■今月のカトー折り
~食事中にゴミ発生!すぐにできるゴミ箱(箱折り)~
(タレが垂れそう、カニの殻が出た、小皿がほしい)

カトー折りは、すぐできる箱、慣れれば、すぐできる箱です。手つきが大事で、このように指のかたちにして、紙をつまむというところが大事です。これをまねして、信じて、やってみると、すぐに箱ができるという次第です。
手遊びみたいにして、箱ができれば、楽しいものですが、これができると、すぐ器が手に入るのでこぼれる、垂れる、こぼさないように、というときに、その場にある紙、包装紙でも、レシートでもできます。
お試しあれ、ですね。