ヨーロッパのマンション(第十歩)
ベルリンの建築規制 “軒樋の高さ(Traufhöhe)”
ベルリンの市街地は、防火の理由から建物の高さは昔から” 軒樋”の高さまで、と限られていました。建物の正面ファサードは通りの広さと同じくらいの高さ(約22m)にしなければならず、それは火災が発生した際、通りを隔てた家屋への延焼を防ぐ目的だそうです。
1887年制定の違法建築取締警察条例(建設警察条例)
当該条例は、現在もベルリンでは適用されています。高さだけではなく、家のデザインも均一にしなければならず、建物は通りに沿うように建てられました。同時に、中庭の広さも規定され、少なくとも60平方メートルの大きさでなければなりません。
中庭への通路基準
中庭への通路は、幅2.30m、高さ2.80mと決まっており、これは現在も市街地で確認することができます。
郊外地域での適用除外
郊外の大半は、これら規制が免除されていましたが、農村部の建築物の高さはさらに厳しく制限されていたそうです。その違いは、現在も市街地と農村部だったころの境で見られます。市街地では5階建ですが、隣接する自治体では4階建になっているところがあります。
緩和されつつある建築規制
ドイツ国内において何度も建築規制を統一させる試みが行われました。西ベルリンでは、古い建築基準が1958年に改正され、2006年に緩和されています。 しかし、まだ連邦州全体で統一された建築基準は存在していないようです。
ベルリンの“軒樋”規制は、現在、緩和されていますが、地区によってはまだ適用されているようです。ドイツの市街地で日本のようなマンションを目にしないのはこのような理由があったからなのですね。たとえ建設されても高さ制限があるのでは、マンション売却の収益性から考えると市街地を避けた方がよさそうです。以前、紹介したウォーターフロントのマンションにもこの規制は適用されているみたいです。
(独ベルリン 是沢 正明)