マンション関連判例集

マンション関係判例集(第7歩)

【マンション関係判例集】

本資料は山形民男氏の作成した判例資料集「時系列平成26年~令和2年」全131ページをもとにしたものです。

①各判例に見出しを作成して付け加えた。

②山形氏が作成した判例の要旨を箇条書きに再構成した。

③時系列ではなく、テーマごとに再構成した。

④一次資料をもとにした山形氏の資料を二次資料とすれば本資料は三次資料です。したがって内容の正確性を保障するものではありません。

⑤マンション関係訴訟に関心を持つ方が斜め読みして関心のある訴訟に対して当たりをつける補助資料として利用していただければ幸いです。もし本資料を何らかの形で役立ったとすれば、それはひとえに多大な労力を費したであろう西村氏の資料によるものです。この場を借りて山形氏に厚く御礼申し上げます。

 

〇 管理組合と自治会の関係

10■自治防災費の強制徴収の停止訴訟 東京高判 平28年7月20日

概要

①入居時に設立された団地自治会の廃止に伴い、一部業務を引き継いだ管理組合(被告)が、「自治防災費」を徴収する旨改正した管理規約は、“自治会活動費用”を強制徴収するためのものであると区分所有者(原告)が主張して敗訴した1審判決(H28.1.29千葉地判)

②変更し、被告に一部自治防災費返還を命じた(実質は自治会費の代行・強制徴収と判断)→H29.1.19最一小決も支持し上告を棄却した

 

9.■工業団地管理組合の自治会費支出に対する訴訟 東京地判 平28年5月31日

概要

①主に製造会社が作業所として使用する専有部分で構成される工業団地の管理組合の組合員(控訴人)が、管理組合の駐車場収入等から地域工場団体(※自治会に類似)に区分所有者の会費(500円/月)を支出することは不法行為であるとして、管理組合の理事長(被控訴人)に対し賠償金等を請求した

②原審同様棄却された

 

8.■自治会防災費の強制徴収の停止訴訟 千葉地判 平28年1月29日

概要

①入居時に設立された団地自治会の廃止に伴い、一部業務を引き継いだ管理組合が「自治防災費」を徴収する旨改正した管理規約は、“自治会活動費用”を強制徴収するためのものであると区分所有者が主張した

②敗訴した→控訴審(H28.7.20東京高判)と上告審(H29.1.19最一小決)で逆転し、被告に一部自治防災費返還を命じた(実質は自治会費の代行・強制徴収と判断した

 

7.■管理費滞納訴訟と町内会費 東京地判 平27年11月26日

概要

①管理組合が、区分所有者に、滞納管理費、遅延損害金、弁護士費用の支払いを求め、原審で全て認容したことから、控訴人が不服として控訴した

②規約上管理費に「町内会費等」が含まれないことが明らかであるとして、「町内会費等」の支払い義務がないと判決を変更した

 

6.■管理規約による町内会加入義務は無効 福岡簡判 平26年10月9日

概要

①管理組合が管理規約で、区分所有者や占有者は地元町内会に加入しなければならず、町会費を納める義務(債務)があるとしていることについて、

②町内会への加入及び退会は自由であるのであるから、加入を強制することになる規約は無効と言わざるを得ない

 

5.■団地自治会長の住民自治会加入強制・支払請求問題 平26年2月18日 福岡高判

概要

①団地の自治会長による、住民への自治会加入強制・支払請求

②不法行為にあたるとされた(※確定)判時2221-42

 

4.■管理費からの自治会費の支出総会決議は有効 平24年5月24日  東京高判

概要

①管理組合が管理費から町内会費を支出する旨の定時総会決議無効訴訟

②管理規約に町内会への加入義務や町内会費負担義務が記載されており、管理組合の目的に町内会との良好な関係を築くこともその業務内容に含まれると決議を有効とした 「※H19.9.20東京高判と判断が分かれている」

 

3.■管理組合による自治会費徴収代行の脱退者が返還請求 平19年9月20日  東京高判

概要

①管理組合が自治会に対しコミュニティ形成業務の業務委託費用名目で200円/月/人を支払っていたが、自治会退会者が支払済み会費の返還請求

②実質的には自治会費の徴収代行であり、自治会を脱退した者との関係では自治会費相当分は管理組合の不当利得が成立するとした(自治会退会後の支払済み会費の返還を認容) 「※H24.5.24東京高判(№48)と判断が分かれている」

 

2.■管理組合の町内会費相当額の徴収を規約で定めた拘束力 平19年8月7日 東京簡判

概要

①総会決議は共有財産の管理に関する事項について行われるべきであり、管理組合が(共有財産の管理に関する事項でない)町内会費相当額の徴収を規約で定めてもその拘束力はないとして、町内会費の返還を命じた

 

1.■脱退申し入れ後の自治会費の支払い義務はない 平17.4.26 最三小判

概要

①県営住宅の入居者で組織される自治会は、強制加入団体でもなく、規約で会員の退会を制限する規定も設けていないことから、会員には一方的意思表示により脱退する自由がある

②脱退申し入れ後の自治会費の支払い義務はない

 

 

〇管理費滞納59条1項強制競売訴訟

11.■各種滞納金237万 59条に基づく競売請求 札幌地判 平28年8月25日

概要

①区分所有者(法人)が平成23年以来管理費、修繕積立金、水道料金及び暖房費の支払を怠り、合計で237万円余に達している。この法人の実態も曖昧で代表名義の者は既に死亡していて当該室は放置状態にある。

②区分所有法59条に基づく競売以外に上記債権の回収の方法がないと判断され、管理組合による競売請求が認められた

 

10.■管理費滞納元本547万円の強制競売訴訟 東京地判 平28年2月2日

概要

①管理組合が、管理費等を滞納(元本だけで547万円)している区分所有者に対し、区分法59条1項に基づく競売を請求した

②同条以外の方法によっては共同生活の維持を図ることが困難であるとして、請求を認容した

 

9.■滞納管理費728万円で59条1項に基づく競売請求 東京地判 平27年12月21日

概要

①管理組合が、区分所有者の管理費等の滞納(728万円)が区分所有者の共同生活上の障害が著しい状態を招いているとして、区分法59条1項に基づく競売請求をした

②原告の請求を認容した(競売を申し立てても不奏功に終わるため訴えの利益がないとする被告の主張を否定)

 

8.■59条1項強制競売 東京地判 平27年9月1日

概要

①多額の管理費等の滞納に対し管理組合が行った302号室の強制競売手続が無剰余を理由に取り消されたこともあり、501号室も同様のことが見込まれるとして、法59条1項の競売請求が認められた

②被告の区分所有者=会社は出頭せず自白とみなされた

 

7.■滞納競売訴訟 東京地判 平27年8月3日 

概要

①15戸のマンションで管理費及び修繕積立金(合計で約510万円)を滞納競売請求

②要件を満たしているとして認容するとともに、未払い管理費等及び遅延損害金、違約金、弁護士費用等の支払い請求を認めた

 

6.■未払い管理費用支払い競売訴訟 東京地判 平26年10月27日

概要

①管理組合の管理者が、区分所有権及び土地所有権の持分について競売を申立てることと未払管理費等の支払いを求めた事案で、請求を認容した

 

5.■59条競売 東京地判 平26年11月6日

概要

①多額の管理費等を滞納している一区分所有者(被告)に対し、別訴による判決後も滞納を続け、区分所有権に多額の抵当権が設定されていて先取特権の実行による回収も困難であることを考慮し、管理組合からの区分法59条競売請求が認容

 

4.■管理費204万滞納による区分所有建物競売請求事件 東京地判 平27年2月20日

概要

①区分所有者である被告会社(代表者が死亡)の管理費等滞納(204万円超)による競売申し立て

②滞納は共同の利益に反する行為に当たり、強制競売では無剰余取消しとなる可能性が高いとして法59条に基づく競売請求を認容した

 

3.■管理費等滞納による59条競売 東京地判 平27年7月8日

概要

①被告(区分所有者)の管理費等及び水道料等の長期にわたる多額(合計約420万円)の滞納(別の訴訟で支払い請求を認容したが、その後も回収できず)で、今後も未収金が増大する一方となることが推認され、また、管理組合の手段もすべて講じたとして、区分所有法59条1項に基づき競売請求を認容した

 

2.■59条競売請求の相手方への仮処分の可否 東京高決 平27年4月17日 

概要

①区分法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として、係争物に関する仮処分として不動産の処分禁止の仮処分を求める申立てをしたが、原審(H27.2.12東京地決)は、同法59条1項の競売請求権は、処分禁止の仮処分の被保全権利にはならないとして却下した

②高裁においても抗告人(債権者=管理組合の管理者)の申立ては理由がないとして棄却された(上告審のH28.3.18最二小決でも支持された)

 

1.■管理費長期滞納者に対する競売請求 平26年4月22日 東京地判

概要

  • 管理費を長期滞納(不払い額が442万円)した区分所有者に対する59条競売請求を肯定

 

 

〇 59条1項競売請求却下判決等

6.■区分法59条1項に基づく競売請求と無剰余取消可能性 東京地判 平28年4月14日

概要

①管理組合が約695万円の管理費等を滞納している区分所有に区分法59条1項に基づく競売請求をした

②被告の資産に強制執行を行ったとしても、無剰余取消となる可能性が高いことから回収を図ることができず、今後も滞納が増加し続ける恐れがあるとして認容した

 

5.■管理費滞納剰余のため競売手続取消し 東京地判 平26年7月7日 

概要

①管理費を長期滞納(不払い額が607万円)した区分所有者に対する59条競売開始決定がなされたが、無剰余のだった

②競売手続きが取り消された

 

4.■管理費不払いによる競売請求 平26年3月25日 東京地判

概要

①共用部分である駐車場にベニヤ版と鉄パイプで壁を作り、不法占拠をしたとして、管理費等の不払い(400万円超)に基づく競売請求の訴えが提起された

②工作物の形状・位置、設置の形に鑑みれば、工作物の存在により、駐車場としての使用が妨げられ、他の区分所有者が駐車場を平穏に使用することができない状況にあったとして共同利益に背反することは認められたものの、

③補充性の要件(法59条1項:競売請求によるまでもなく、個別の代替執行その他の手段によって、現存する障害を除去することは十分に可能である)を満たさないとして、競売請求は棄却された

 

3.■強制競売が無剰余取消しを巡る訴訟 大阪高決平26年3月3日 

概要

①強制競売が無剰余取消しとなる見込みであることから仮押えを申立てた

②無剰余取消しの回避のために民事保全制度を利用するものであると却下した H26.1.29大阪地決

③「強制競売を申し立てると無剰余取消しになる蓋然性が高く、一方、遠くない将来に剰余が生じる可能性があるから、保全の必要性がある」と取消し差戻した

 

2.■強制競売無剰余取消し問題 大阪地決 平26年1月29日 

概要

①強制競売が無剰余取消しとなる見込みであることから仮押えを申立てた

②無剰余取消しの回避のために民事保全制度を利用するものであるとして却下した

  • →控訴審の3.3大阪高決で逆転(取消し、差し戻し)判時2229-25

 

1.■59条競売での剰余主義不適用 平16年5月20日  東京高決

概要

①法59条競売では、区分所有権の剥奪を目的とする(配当は予定せず)ものであるから、剰余主義の規定(民事執行法63条)は適用されないとした(違反者に対する最終手段)

 

〇 59条競売請求権は、処分禁止の仮処分の被保全権利とはならない

2.■59条競売請求濫用的処分のおそれ保全処分の可否 最二小決 平28年3月18日

概要

①区分法59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として、民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない(競売請求権は、民事保全法上の処分禁止の仮処分の被保全権利とはならない)として、原審(東京高決H27.4.17)を支持し棄却した

※仮処分決定取消及び仮処分命令申立て却下決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告事件

②H23年10月11日最三小決同様、特段の事情の余地への言及がないため、法59条競売請求権の執行妨害に対しては、不当な買受人に対する法59条競売請求権の確定判決を改めて取得して、執行するより他に手段がないことになる(センター通信2017-7-16)

③H23年10月11日最三小決によって59条競売を容易に潜脱することが可能となり、それを防止する方法として学説から提唱された民事保全法による処分禁止の仮処分を用いることもできないことが本決定によって明らかになった以上、59条競売の実効性を確保するためには、民事執行法上の保全処分を活用するほかない

(リマークス55(2017下)113)          民集69-2-419、70-3-937

 

1.■管理費滞納者に対する処分禁止仮処分訴訟 東京地決 平27年2月12日 

概要

①管理組合が管理費等を滞納している組合員(債務者)に対し、区分法59条1項の競売請求権を保全するため不動産を目的とする処分禁止の仮処分を申し立てた

②H26年11月11日東京地決で認容されたが、債務者が、同仮処分決定の取り消しを求めた事案で、債務者の請求を認めた

③⇒民事保全法所定の登記又は登録を保全執行の方法とする処分禁止の仮処分は、同法に明文のある、登記請求権を被保全権利とするものに限られることは明らかであると判示(H23年10月11日最三小決を引用)

  • 控訴審の東京高決H27年4月17日と上告審の最二小決H28年3月18日でも支持し、棄却された

 

 

〇 競売申し立ては59条によらない場合の弁明の機会問題

1.■マンション理事の不法行為による慰謝料等請求事件 東京地判 平28年3月17日

概要

①区分所有者が、管理組合の理事らに対し、自室に対して申し立てられた競売が区分法59条の対象であるのに、原告に弁明の機会を与えなかったことは共同不法行為に該当するとして、損害賠償請求した

②本件は管理費等請求訴訟の判決を債務名義としてなされた競売の申立てであり、59条規定の競売申立てではないとして棄却された