特別寄稿 分譲マンションの窓・玄関ドア改修工事と補助事業(その3)

分譲マンションの窓・玄関ドア改修工事と補助事業 その3
【総会決議後の改修工事スケジュール】

YKK AP株式会社 首都圏改装支社 営業推進部 長田 克也

分譲マンションの窓と玄関ドアのお話は今回が3回目となります。今回が最終回となります。前回までのおさらいを少しさせていただきます。
6月度の「その1」では、分譲マンションの開口部(窓・玄関ドア)改修工事に関係する「補助事業」について、2010年の「住宅エコポイント制度」からはじまり、現在の「住宅省エネ2024キャンペーン」に至るまでのお話をさせていただきました。
7月度の「その2」では「補助事業」を活用して開口部改修工事を実施するにあたり、管理組合の中でどのような検討をしていくべきかについて、触れさせていただきました。住民の合意形成を図るために、早め早めのスケジュール作成が肝要であることをお伝えさせていただきました。
最終回の今回は無事に合意形成ができて、総会で開口部改修工事が決議された後の話をお伝えさせていただきます。

【総会決議後の改修工事スケジュール】
1. 全戸調査実施日アンケート配布・回収
2. 全戸調査実施
3. 調査結果報告、同時進行で施工図面作成
4. 施工図面承認、製作工場へ投入
5. 工事説明会開催、工事実施日アンケート配布・回収
6. 製品搬入、施工開始
7. 工事完了

おおまかに分けて、このような感じになるかと思われます。以下、ひとつずつ見ていきましょう。
「1」を飛び越えて、「2」の話からさせていただきますが、この「2.全戸調査実施」が非常に重要な部分となります。マンションの開口部改修工事の製品は規格品ではありません。現地で加工しながら納めるものでもなく、現地の既存に合わせて製作するオーダー品になります。これはメーカーの自己満足では無く、現地での工事の時間を短縮することが最大の理由です。お住いの方の負担を少しでも減らすために考えられた工法です。結果的に工事費のコストダウンも達成できています。それ故にココを間違ってしまうと、その後いくら図面を丁寧に作成しても、どんなに精度良く工場で製作しても、優れた職人さんの腕を持ってしてでも現地では納まらないという状況になります。「2.全戸調査実施」が重要な理由はココにあります。
この調査は住戸内からの実施となりますので、「在宅」が必須になります。そのため「1」のアンケート配布・回収が必要になります。日程調整の作業を経て「2.全戸調査実施」が始まります。「全戸をやる必要があるのか?」というご意見もいただきます。全戸実施の理由としましては、以下のようなものが挙げられます。
①.住戸内のリフォーム(内窓設置、床面高さの改造等)状況の調査
②.既存窓枠・ドア枠の変形確認
③.窓まわりの家具等の設置状況確認

まず「①」については、最近多いのは「内窓設置」されているケースです。この内窓は窓改修工事実施の際は一旦取り外すことが多いです。復旧も含めてプラスアルファの費用が発生しますので、「内窓設置」箇所の把握が必要になります。他にも室内床の高さが変わっていたり、内部窓まわりの造作が変わっていると窓改修工事に影響が発生することがあります。この部分の把握が必要なことが理由です。次に「②」についてですが、長い間お使いいただいた結果、窓枠やドア枠に変形が発生しているケースがあります。その部分の確認も必要です。「③」も重要な要素で、よくある話として北側の部屋が実質「納戸」になっているケースもあり、荷物が多すぎて住戸内から窓にアクセスできないというケースもあります。その状況では工事もできませんので、事前に確認をさせていただいて、工事日までには解決していただくことをお願いしています。荷物移動に際しては、業者に委ねる等、第三者にお願いされているケースもあります。この全戸調査にかかる時間は1住戸あたり30分程度です。
全戸調査終了後に理事会や修繕委員会のみなさまには、「3」の調査結果報告をさせていただいております。同時進行で施工図面の作成を進めます。この調査結果報告についてですが、内容としましては、「プラスアルファの費用が発生する事象について」がメインとなります。例として先ほども触れました「内窓設置」住戸です。他に「既存窓からの設備配管通し」や「既に窓改修工事が実施済み」などという事例もあります。費用面以外では、長期不在等で実測調査にご協力いただけていない住戸についての対応策等も検討内容に含まれます。これらを理事会・修繕委員会のみなさまと議論をして方向性を決定します。その他、窓や玄関ドアの製品の仕様(色やデザイン)等も決めていく必要があります。
その後、図面が出来上がった段階で、決められた事柄が網羅されているのかを理事会・修繕委員会のみなさんに確認していただきます。これが「4.施工図面承認」となります。図面承認後にようやく製作工場に製作投入となります。ここまでで、総会決議後に4ヶ月超の時間を要しています。ここから製作にかかる時間は、製品の内容とボリュームにもよりますが、概ね3ヶ月ほどです。
この製作期間中に「5.工事説明会開催」となります。これは極力多くの住民のみなさまに出席いただき、工事に際しての注意事項をお聞きいただきます。質疑回答の時間もありますので、有効活用していただければと思います。工事説明会終了後には、アンケートによる工事実施日の確定作業となります。これは「1」の全戸調査の時と同じ要領で実施します。
そしていよいよ「6.製品搬入・施工開始」となる訳ですが、その前にマンションの敷地内に仮設を設置させていただきます。物件の規模・内容にもよりますが、おおよそ1日に施工できる住戸数は3件から4件ほどです。住戸数が多くなれば日数も余計にかかりますので、まずは現場代理人が常駐する現場事務所、更に作業員の休憩所等も設置が必要です。

 

 

 

 

 

 

また開口部改修工事の場合は、工場から運んできた新しい窓や玄関ドアを仮置きするスペース(ストックヤード)が多く必要です。更には取り外した窓ガラスや玄関扉を仮置きするスペース(廃材置場)も必要です。これらは産業廃棄物として何回かに分けて搬出します。このように色々なスペースが必要になりますので、スペースの確保をお願いしております。スペースが不足する場合は、工場からの搬入回数を増やしたりして対応するなどしていますが、予算面・工程面で影響が出る部分ですので、その部分は早めに打合せをさせていただいております。ここからは現地での作業となります。総会決議をいただいてから相当な期間が経過しておりますが、ようやく最終段階です。現地での作業が大半になりますので、最優先は「安全」になります。お住いの住民のみなさまはもちろん、近隣にお住いのみなさま、更には作業員も含めての話となります。施工(工事)当日は、工事対象住戸の方には1日ご不便をお掛けすることになりますが、その日の夜には新しい窓や玄関ドアが設置された住戸でおやすみいただくことができます。「その2」でお伝えさせていただいた「今までとの変化」を体感していただくことになります。
そして全戸の工事が完了した時点で、ようやく「7.工事完了」となります。工事完了後も補助事業の申請業務等(補助事業を活用された場合)が残ります。補助事業の事務局側に工事完了報告を行って、事務局側の確認後に補助金が支払われることになります。

住戸規模100戸を想定した場合の所要日数は下記のようになります。
(日数は参考としてください)
【総会決議後の改修工事スケジュール】
1. 全戸調査実施日アンケート配布・回収        30日
2. 全戸調査実施                   10日
3. 調査結果報告、同時進行で施工図面作成       90日
4. 施工図面承認、製作工場へ投入           90日
5. 工事説明会開催、工事実施日アンケート配布・回収  30日
6. 製品搬入、施工開始                50日
7. 工事完了
トータル日数で 300日、約10ヶ月ということになります。尚、ゴールデンウィーク・夏季休暇・年末年始休暇は含んでおりませんので、実質はもう少し日数が必要になるということになります。これらに補助事業のスケジュールを加味しながらスケジュールを作っていくことが必要になります。

このように開口部(窓・玄関ドア)改修工事には長い期間が必要になります。「初訪問からかれこれ3年?」なんていう管理組合もいらっしゃいます。一方で音頭を取られる方が行動的な方ですと、「1年で完結」という管理組合もいらっしゃいます。置かれている状況は管理組合ごとに色々です。「今年は見送った」という管理組合もいます。その組合の方曰く「今年は工事できなかったけど、費用・期間・製品・補助金と学習したので、しっかりと準備して再チャレンジしたい」と仰っていただきました。築30年~40年を超えているマンションで、まだ準備をされていない管理組合の方・管理組合に関係されている方は、是非一度お声掛けください。窓と玄関ドアの専門メーカーであるYKK APに先々の改修工事の準備のお手伝いをさせてください。

「分譲マンションの窓・玄関ドア改修工事と補助事業」について3回に分けて寄稿させていただきました。少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。
3ヶ月にわたり、拙い文章をご覧いただきありがとうございました。

特別寄稿への問合せ先
会社名:YKK AP株式会社 首都圏改装支社 営業推進部 長田 克也
メールアドレス:k_osada@ykkap.co.jp
電話番号:080-1321-9261■会社の特徴
会社の特徴:みなさまが普段何気なく使われている「窓」「玄関ドア」等の建材を作っているメーカーです。新築工事・改修工事問わず、一戸建て住宅・マンション・オフィスビル・店舗・教育施設等、物件に合った製品のものづくり・提案を行っています。分譲マンションの改修工事においては、専門チームが対応させていただきます。安心してお任せください。
会社のURL:https://www.ykkap.co.jp/