特別寄稿 当社が垣間見た管理費等の滞納事例

当社が垣間見た管理費等の滞納事例
~管理費等を滞納した区分へのアプローチから解決まで~

株式会社VAMOS 代表取締役 佐藤 永進

当社が推進しております「マンション管理費等支払保証」事業を始めて、早5年を経過致しました。
起業した頃は、管理費等支払保証とは何なのか?どんな方法で、どのような効果があるのか、管理組合への有効性は何か、様々な質問を頂きましたが、世の中でまだ誰も行っていない事業に対して、表面的には賛同して頂けたのですが、最終的に採用して頂くところまで辿り着かない日々を過ごしていました。

そのような状況だったのですが、とある日、横浜市戸塚区の管理組合の理事長から電話を頂きました。
その電話を頂いた管理組合の事例を用いて、当社の「マンション管理費等支払保証」が、滞納している区分所有者はじめ管理組合理事会へ作用するのかをお知らせしてみたいと思います。

小高い丘に建つ管理組合
事例として取り上げさせて頂くマンション管理組合は、神奈川県横浜市戸塚区にある2連棟の築年数41年を経過している分譲型マンションで、総区分が30区分の小規模な管理組合です。

当社の保証を採用頂く前に、まず理事会にお邪魔して、理事長はじめ理事の方々から、現在の管理費等の滞納状況や滞納している区分所有者に関するお話しをお聞きする事から始めて行きます。
ここで管理組合理事会が抱えている課題や考え方が見えてくるので、当社として、じっくり時間をかけてお話しを聞くように心掛けています。

お邪魔した管理組合理事会の方々はとても友好的な方々で、理事会構成状況としては、分譲当時からの区分所有者と後から購入された区分所有者が半々の管理組合で、落ち着いた雰囲気を醸し出されている理事会でした。また、いろいろお話しをお聞きしている際に、つい最近、大規模修繕工事を完了させたようで、小さな管理組合がどこでも抱える、修繕積立金が思うように集まらない、修繕工事を行うためだけに修繕積立金を値上げするような決断は難しい状況下で、長年、修繕計画の修正を重ねて、何とか修繕工事を実施されたようでした。築年数が古く旧建築基準法適用物件の5階建てでしたが、幸いなことにエレベーターは設置されていないため、エレベーターの保守料等の出費が他の組合より抑制されて、何とか修繕工事費用を捻出できたのではないかと想像しました。当該建物は、小高い丘の頂上に建築されており、第一種低層住居専用地域のためか、敷地に対してゆったりとした建物の配置であり、尚且つ、周りに高い建物が建っていないため、私見ですが、築年数は古いのですが静かな丘に建つゆったりとした好印象な建物でした。

解決したいとの一大決心
さて本題ですが、当該管理組合の運営状況を拝見させて頂きましたところ、管理費の滞納が3ケ月以上発生している区分数が全体の30区分に対して3区分も存在しており、そのうち、10数年滞納を重ねている区分が存在している状況でした。
区分数が少なく小さいためか理事のなり手も少なく、現在の理事長自身、長期に亘り理事長を続けておられ、築年数が古く小規模のマンションであれば、どこでも抱えてしまう問題を纏めたようなお話しが次から次と出てきました。
当該マンションにお邪魔させて頂いた頃は、まだ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がどんなものなのかも判らない2019年の夏でした。当社を贔屓にして頂いている管理組合の会計支援を生業にしている企業の社長が、2017年ごろに会計支援を受注した管理組合で、どうしても滞納を解消できない区分があり、現理事長から、大規模修繕も控えているので、何としても滞納を解消することはできないかとの先ほどの社長へ要請が入り、「これはVAMOSのマンション管理費等支払保証を紹介しよう」と思い立ち提案して頂いたようです。
先の社長曰く、提案した途端に理事長から、「是非とも依頼したいので引き合わせて欲しい」との話になり、有難いことに当社へすぐ連絡をして頂く事になったようです。

理事会メンバーの方々と面談
当社では、いつも制度説明等を行う際には、管理組合理事会に参加させて頂いています。お邪魔する際には、原則的に公共交通機関を利用してお邪魔することにして、自動車ではお邪魔しないようにしています。理由としては、ご依頼頂いた管理組合様へお邪魔する公共機関の有無や、建物周辺の生活環境、建物自体をゆっくり見るためです。今回もいつも通り、電車に揺られ路線バスの車窓を眺めながら、弁護士へご紹介してお願いする案件が多いのか?当社が代位弁済する保証区分が多いのか?いろいろ思い描きながら当該マンションの最寄りのバス停で下車しました。
面談場所として指定された管理棟には、理事会メンバーの方々が当社の到着を今か今かとお待ち頂いていたようで、当社と気持ちよく部屋へ招き入れて頂きました。
お会いした理事会メンバーの方々は、現役世代はじめOB世代が万遍無く選出された理事会で、当社の制度説明を始めた途端、様々なご質問が飛び出し、改めて当該管理組合が抱えている滞納に対して、非常に関心があり、何とかしたいと強い思いがある理事会だと痛感しました。
早速、現理事長にお願いして、ご依頼頂いた滞納している区分に対して、当該管理組合が今までどのように活動されたのか?滞納が発生した原因や背景が判るようであれば教えて欲しいとお聞きしたところ、単なる弁護士をご紹介する案件だと思っていたことは大きく違っており、残念ながら、滞納状況としては拗れに拗れてしまっており、一筋縄で取り組めるような事案でないことがすぐに理解しました。

滞納さしている区分所有者とは
理事長から開示して頂いた管理組合内部資料から、長期に滞納している区分の状況を確認してみたところ、すでに時効を迎えるほどの長期間の滞納であり、理事長が何度も滞納している区分所有者のところへ出向き督促を行っても、滞納している区分所有者は玄関の扉を開ける事は無く、何ら返答さえして頂けない状況だったそうです。逆に、滞納している区分所有者から、なぜ督促をするのか?なぜ呼び鈴を鳴らすのか?などのクレームを言われてしまう始末。
本当に一筋縄では解決できそうもない状況だと、よく理解できました… 滞納する理由にも人それぞれ 資料に記載されている滞納期間が最長の区分所有者は、以前、当該マンションの理事でもあった方で、管理組合の規約改定にも尽力した人物とお聞きしてものすごく驚きました。そのような管理組合運営に従事された方が、管理費等の長期滞納を発生させていることを知ってしまうと、管理組合の運営側の区分所有者であろうと、いつ何時、管理組合へ問題を発生させてしまう側に回ってしまう可能性があるのだと痛感しました。
マンション管理組合の運営をよく理解している区分所有者が、何らかの理由により、マンション管理組合の足を引っ張る側に回ってしまうと言う事例が、こんな身近に存在するのだと何とも不思議な気分にもなり、少々、残念な気持ちにもなりました。
その他2区分にも、滞納したそれぞれの理由があることも判明しましたが、管理組合として、場当たり的な対応しか行われていなかった様子で、根本的な滞納を解消する動きが足らなかったようにも思える内容でした。また、その他2区分のうちの1区分では、数年前に支払い督促の訴訟を提起して、管理組合が勝訴していることが判りました。しかし、勝訴した後の手続きが、何かの原因で差し押さえ請求まで行われず、滞納解消までには至っていないことも判明しました。
なぜ訴訟を継続しなかったのかと理事長へ質問させて頂きましたところ、当時、理事長自身、体調を崩されて、その他理事からも継続手続きの協力を得られなかったため、差し押さえ手続きまで至らなかったとの事でした。本来であれば、理事会全員が一丸となって対応する事例だと思うのですが、理事の方々が理事長へ一任したと思い込み、それに伴い、理事長単独での対応となってしまい、最終結論に至らなかった残念な結果になってしまったようです。
いろいろ状況を聴取している間にも、理事長からは、何としても滞納を解消して欲しいとの強い思いに依る依頼があり、その他理事からも、いつまでも管理費等の滞納を続けさせると、今後の管理組合運営に大きな支障が出るのではなかと言う発言が多くなり、この時点で管理費等の解消を進めるべきとの意見に収斂されてきました。当社として、理事会メンバーの管理費等の滞納解消への意思を確認できたので、今回の滞納問題に対してしっかり対応できるチームをご紹介することを約束しその日は退席しました。

VAMOSマンション管理費等支払保証とは
ここから若干わき道にそれますが、当社の管理費等支払保証について、簡単に説明させて頂きたいと思います。
当社の保証は大きく分けて2種類の方法が存在します。
一つ目は、当社が滞納した区分所有者に成り代わり、管理組合へ代位弁済を行ったうえで、代位弁済を行ったと同時に付与される求償権を行使する保証方法で、当社社内ではⅠ型と称している方法と、もう一つは弁護士介入を前提として、当社が後方支援を行う方法で、当社としてⅡ型と称している方法があります。
判りやすく解説させて頂きますと、Ⅰ型である当社が代位弁済を行い、求償権を行使して督促する方法は、滞納が発生していない、もしくは1か月程度発生している軽度な滞納事案に適用される保証となります。当社で滞納を6種類に分類しているのですが、1か月程度の滞納のうっかり滞納と称しており、振替口座へ新規を入れ忘れて程度の滞納に適用し易い保証です。
Ⅱ型である弁護士介入の保証とは、長期に亘り管理費等を滞納している区分所有者と、現時点1か月程度もしくは滞納していない区分所有者と区分けして、長期に亘り管理費等を滞納している区分書写は、最初から弁護士に依頼して対応して貰い、軽度もしくは発生させていない区分所有者に向けては、Ⅰ型の保証を行う方法となります。
当然、Ⅱ型を希望される管理組合理事会からの問い合わせが非常に多く寄せられるのですが、最近では、Ⅰ型を希望される管理組合理事会も増えつつあります。
当社が設立した当時は、Ⅰ型を世の中に広めようと活動しだしたのですが、やはり長期滞納に苦しむ管理組合が多く存在しており、どうにかして欲しいと要望が多く寄せられ、当社の顧問弁護士事務所に相談して、非弁行為にならない方法でⅡ型を組成することに成りました。
管理会社では、滞納解消に向けた提案や、督促状の送付や電話連絡程度しかできないことに気が付いた管理組合理事会から、理事会に来て保証内容や方法を説明して欲しいとの依頼が増加しています。

回収に向けた提訴の準備
ここからは話しを本線に戻して、理事長はじめ各理事からお教え頂いた滞納関連の情報を整理して、まず、支払い督促の訴訟で勝訴判決を取得している区分へは、差し押さえ請求、その先の競売へ進めることが可能と思われたため、当社の活動内容に理解してくれ協力してくれる弁護士事務所の中から、地域的に合致する弁護士事務所へ、入手できた資料と聴取した内容をお伝えして、管理組合をご紹介するので受任してくれるかを確認させて貰いました。
当該弁護士事務所の弁護士は、マンション管理組合向けの事案を多く手掛けている弁護士であり、競売事案も多く手掛けている弁護士であるので、これはご紹介するべきと思い事務所へお邪魔することにしました。(当社としては、非弁行為となるのを避けるべく、長期滞納案件に関しては、協力してくれる弁護士へ案件を引継ぎ、管理組合全体の把握や連絡等の役割分担を担う事としています。)
お願いした弁護士から受任して頂ける意思表示を頂いたので、早速、理事長へ弁護士をご紹介させて頂く場として理事会を開催して欲しいとお願いしました。理事長も待ちに待ったと言う気持ちだったのではないでしょうか、すぐ理事会メンバーの都合を調整して頂き、翌々週に開催されることになりました。
当日、当該弁護士から、ここまで進んでいる事例であれば、競売は容易だろうと思われるので、提訴するための手続きを進めるためには、当該マンション管理組合の管理規約を確認し、そのうえで、管理組合と弁護士の間で委任契約を締結する必要があると細かく説明されました。当然、提訴する際には総会決議もしくは理事会決議を取得する必要があるので、定時もしくは臨時の総会を開催し、しっかり区分所有者全員に知らしめるべきと弁護士から理事会へ提案がなされ、出席していた理事会理事全員から承認されました。
区分数が余り多くない当該管理組合では、区分所有者同士の意志疎通は容易のようで、訴訟提起が理事会で決まったことが、数日も経たずに大方の区分所有者に伝わったようでした。
今までの経験から、大方の区分所有者に訴訟提起が行われることが伝わったと言う事は、滞納している区分所有者から何らかの動きがある場合が多いので、当該滞納区分所有者からも何らかの反応がみられるのではないかと淡い希望を抱いたのですが、結果的にはその淡い希望は単なる夢物語となってしまいました。
当該弁護士と打ち合わせをさせて頂いた際に、滞納問題に関して区分の競売へ進めてゆくと、裁判所から競売入札日が指定され日程が確定するので、入札日まで間に滞納している区分所有者から何らかの動きが出てくることが多く、滞納している区分所有者から任意売却等の提案が出される可能性も高まるので、提訴せず通常の督促を続けた場合には、「いつになったら解消するのか」、「目途はつかないのか」という理事メンバーの苛立った発言が起きる可能性が高くなるので、提訴することはある程度日程等が明確になるので、管理組合の滞納問題の有効な手段だと言われました。
また、当社のような企業が滞納問題に介在するのは、滞納している区分所有者からすると、顔見知りの理事会メンバーから督促されるより、管理組合ではない外部の企業が接触して来るのは、滞納する区分所有者からすると非常に苦痛のようです。当社のような企業が督促して来られるのは、滞納している区分所有者に執っては戦々恐々の心境のようです。事実、当社が介在することが決まった管理組合では、今まで音沙汰がなかった管理費等の滞納を引き起こしている区分所有者から、滞納している管理費等の精算をすぐにでも行いたいとの連絡が寄せられる事例が多数存在します。
当社の事例から勘案すると、顔見知りからの督促は無視することはできても、他人や企業からの督促には、過剰に反応する場合多いように思われます。

解消できない場合もあります
今回のような対応では、競売価格がある程度、滞納額を上回る金額が予想できる場合であって、滞納金額を回収できることが予想できる事例であれば良いのですが、管理費の滞納総額と区分売却額が逆転して、売却額が滞納額を下回る場合もあります。
では、売却額が滞納額を下回るはどうなるのか?管理組合の決断にも依りますが、大きく2種類の結果に分類されます。
一つ目は、売却価格が滞納額を下回るのは、管理組合としては容認できないと言う事で、競売手続きを取り下げた管理組合があります。
二つ目は、売却価格が滞納額を下回っても、滞納している区分所有者を野放しにすることは容認できないと言うことで、競売を強行して、差損が発生した管理費等を収支報告書から除却するべく、除却する旨を明記した議案を総会へ上程した管理組合があります。
その他の方法を執った管理組合もありますが、滞納額を下回っても清算するにしても、滞納をそのまま続けさせるにしても、最悪、管理組合としては滞納額を除却する決断をせざるを得ない時期が訪れます。結果的に、管理組合として苦渋の決断を下すことになります。
管理費等の滞納を継続させるような決断がなされた場合には、滞納自体に時効が発生する事は避けられず、管理組合としては除却することになります。清算する決断ができなかった管理組合で多いの事例としては、滞納額を延々と積み上げて、収支報告書に記載し続けている管理組合があります。この収支報告書では、区分の売買に大きく影響することはあまり知られていません。(マンション価値の評価に影響します)
できることであれば、苦渋の決断を下すような事例が生まれないことを願うのですが、バブル当時に竣工したリゾート型マンションでは、売買価格の低迷や市町村からの除却要請などが発生しているため、滞納額を除却するような苦渋の決断を下す事例が多発するのではないかと思われます。
売却額が滞納額を下回る事例に関しては、最近、当社へ依頼頂いた事例があり、改めて、記載したいと思います。
今回は以上とさせて頂きます。ご拝読頂きまして、誠にありがとうございました。

特別寄稿への問合せ先
会社名:株式会社VAMOS
メールアドレス:info@vamos78.com
電話番号:03-6457-7102■会社の特徴
集合住宅(マンション)へ、以下のサービスを展開している企業です。
VAMOS単独事業
①家賃保証事業:賃料(家賃)債務の保証
②管理費等支払保証業務(特許登録済事業):管理費・修繕積立金の滞納債権の保証
③建物評価事業(特許登録済事業):集合住宅の内部データを分析して数値化
他社連携事業
④管理組合運営支援 「クラサポ」:イノベリオス社と連携した管理組合会計支援サービス
⑤通信事業 「B-cubic By VAMOS」(事業者登録済):ブロードエンタープライズと連携したネット提供サービス
集合住宅(マンション)が必要とするサービスを、早急に組成して提供することを目指しています。
会社のURL:https://vamos78.com/