アメリカ便り(第四十歩)

■MUSIC CITY ナッシュビル

いよいよ夏もそこまで来ていますね。ダラスでは、暑い日は40度近くまでになっています。
少し郊外に出て、強い日差しの乾いた景色を見ているとカーラジオからカントリーソングが流れてきました。

The Nashville Country Music Best Of All Time
https://youtu.be/Ll8T1r8-kE0?si=sk3kNwYggZwhqhXf

さてこのカントリーミュージックの聖地と言われるのは、テネシー州のナッシュビルです。
ここは、MUSIC CITYとして街おこしプロモーションの成功した街としても知られています。

ナッシュビルはテネシー州の州都で、ナッシュビル都市圏の人口は2020年で約69万人。鎌倉と姉妹都市関係にあります。
現在、高層ビルの建設ラッシュで沢山のビジネスとともに労働人口も増加の一途を辿っています。

報告によれば、この街の2022年におけるGDPの経済的な原動力として5つの分野が挙げられます。
製造 697億ドル
健康 677億ドル
音楽 100億ドル
技術 80億ドル
観光 76億ドル

20年前に計画をたててMusic CItyとしてブランディングされてきたようです。
空港内でライブ演奏を定期的に行ったり、ギターの形をしたベッドで集客するホテルがあったり、フォーシーズンホテルではギブソンのギターをルームサービスとして部屋に届けるオプションもあるそうです。ダウンタウンでは沢山のバーやレストランが並び、毎日あちこちからライブ音楽が聞こえてきます。

Mark Michael氏は、2007年にナッシュビルにあるレコードプレス工場を安値で購入。2022年のレコードの売り上げが20億ドルになり、現在毎日4万枚のレコードをプレスし、拡張工事を進めており2030年には40億ドル売り上げを見込んでいます。
ウォルマートやターゲットなどのグロサリーストアでもテイラースイフトなどのレコードを店内で販売し売り上げを伸ばしているようです。

Steve Schnur氏は、ゲーム向けの音楽を制作していますが、需要の高さからレコーディングスタジオの数をナシュビルに増やしてほしいと訴えかけています。

このように音楽関連産業が盛り上がりを見せていますが、実はそれ以上にこの街の復興を支えているものがあります。それは、ビジネス計画です。

アマゾン社は、現在既に3000の仕事をナッシュビルに持ち込みました。そして、今後更に2000の仕事を用意する計画を立てています。これら一つ一つの仕事の平均年収は$150,000です。

これがどうして実現されたのでしょうか?それは、市と企業の契約によるものです。

アマゾン社は複数年かけて230億ドルの投資をナシュビルで行う予定があるので市からも協力してほしいと持ちかけました。それに応えて、先述の年収の仕事を5000用意してくれれば、最終的なインセンティブとして102億ドルを用意することにしたのです。そして、アマゾン社は現在意欲的にこれを実現化している状況にあります。

また、米国ソフトウエア企業の大手オラクル社は、同様な契約を市と結び本社移転の検討もしているようです。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/04/5262ceb694f82240.html

Bobby Rolfe氏はテネシー州の都市開発の役員をしており、彼に対してオラクル社が交渉をしてきたとのこと。同社からの要求はこうだ。ナッシュビルに本社を移転してそして120億ドルの投資をして8500の新しい仕事を作り出すので、州税を免除し、オラクル社向けに176億ドルで60エーカーの土地をダウンタウンの川沿いに購入して用意する。そして、そこから勤務者が15分で移動できるような道路やボート向けのデッキなどのインフラを用意して欲しい。

最終的に結んだ契約は、5989の新しい仕事、1350億ドルを5年で投資。新しい仕事のサラリーは時給54.92ドル。ナシュビル市としては65億ドルを用いて川沿いのインフラを行うことになった。

これらに前後して、三菱、日産、HCAヘルスケア社もナシュビルに本社移転を行っています。ナッシュビルはヘルスケア産業の集積地で、病院経営大手のHCAヘルスケアなどが本社を構えており、ナッシュビルヘルスケア協議会によると、500社以上の医療関連企業が進出しているほか、ヘルスケア産業の専門知識を提供するプロフェッショナルサービス企業(会計、建築、財務、法務など)が400社近く立地しています。同社エリソン氏によると、ナッシュビル地域がヘルスケア産業の集積地である点に加えて、同社従業員調査で働きたい場所、家族と暮らしたい場所の両方で人気が高いのだそうです。

今回の記事は、CNBCの特集番組 ’Cities of Success: Nashville’ を情報源としています。
https://www.youtube.com/watch?v=ck3WYNfpyAA

都市開発がこうして企業とタッグを組んで行われ、実際に成功して発展を遂げているのは素晴らしいことと思いますが、日本ではいかがなものでしょうか? 台湾では大地震からの復興が早いと評価されている中、石川県輪島での復興はまだまだと聞いています。この差を縮めるために我々は何ができるのか? 輪島にはスマートシティ計画(スーパーシティ、デジタル田園都市)があるそうですが、現実化に向けて具体的に何か進められているのか、今後も色々と注目していきたいと思います。

ところで、話は変わりますが、先日掃除していたら引き出しの奥の方から古いカセットテープが出てきました。
テープに書かれていたタイトルから以下のCDだったことが判明。

避暑地まで Down to the resort 1986年
https://youtu.be/49BKx-8DW40?si=dUvkc2uLZ19qriiz

これがリリースされたのは80年代半ばのようです。
軽いBGMとしてよく聴いていました。

今年の夏も暑くなりそうですが、避暑地に行った気分で、
たまにはこんな感じの音楽はいかがでしょう?

(米テキサス 谷 景太)