マンションと法(第二十五歩)

■総会への出席率

本連載では、管理計画認定制度の認定基準の項目に沿って、マンションに関する法的問題を取り上げることとしています。
これまでは、「管理組合の経理」に関連して管理費等の滞納問題を取り上げ、その後、「管理組合の運営」に関連して役員に関する法的問題を取り上げてきました。区分所有法等の法律や制度をご紹介することも有益かとは考えておりますが、実際のマンション管理の場面では何が問題となっているのかという生の情報をお伝えすることの方が皆様のイメージが沸きやすいのではないかと考えています。このような問題意識から、役員に関する法的問題を取り扱った際には、法律や制度の紹介に止まらず、いくつかの裁判例をご紹介することにしました。皆様のお住いのマンションにおいて何か法的な問題が発生した場合において、過去に似たような事案があったなと当たりを付けることは重要であり、そのための引出しを一つでも多く持っているに越したことはありませんので、引き続き、裁判例のご紹介は続けていきたいと考えています。
さて、認定基準における「管理組合の運営」においては、役員に関する事項とともに、集会(総会)に関する事項が規定されています。
総会は、管理組合の総組合員(全区分所有者)で組織されるものであり、管理組合における最高の意思決定機関です。総会は、毎年1回開催され、前年度の事業の執行や予算の執行の結果が報告されたり、来期の役員の選任や事業の執行計画や予算の承認が行われたりします。そのため、総会は、管理組合における最高の意思決定機関として、組合員が所有するマンション管理等の方法を決める重要な場といえます。
ところが、近年は、総会への出席率が低下しているマンションが増加してきたといわれています。その原因は様々なものが考えられるかとは思いますが、やはり、組合員において、総会が自らのマンションの管理に直結する場であるという意識が低下していることが大きな原因ではないかと思います。組合員に管理組合運営に関心を抱いてもらうためには、自らが居住するマンションにおいて現在どのようなことが問題となっているのかということを管理組合(理事会)が積極的に情報発信することがまず何よりも重要であると考えられます(何をしているか分からないことに関心を抱くことはないと思います。)
言うは易く行うは難しではありますが、理事会は、毎月の理事会の活動状況を組合員に定期的に報告をして、マンションでは今何をしようとしているのか、何が問題となっているのかを伝えることが重要となります。現在発生している問題の解消のための活動は重要ですが、注意喚起ばかりになってしまっては、組合員のモチベーションの低下が懸念されますので、「このようなことをしたい」、「このような方向に向かっている」といった前向き情報提供を意識したいものです。そして、この定期的な活動報告については、何を記載するのかという「テーマの問題」と、選定したテーマをどのようにして組合員に伝えるのかという「伝え方の問題」が、組合員の受け止め方にも影響を与えます。伝え方の問題は、私がマンション問題をテーマにした講演において一番苦労する問題ではありますが、どのように伝えようかと試行錯誤して表現やレイアウトにこだわったときは、単に文字だけで伝えるときと比較して、皆さんの受け止め方が良いと感じています。
これといった特効薬をお示しできないことが心苦しいところではありますが、組合員に対して、総会が自らの住まいであるマンションの今後の行方を決める重要な場であることを認識してもらうことが総会の出席率向上を図るための方法ではないかと考えています。(弁護士 豊田 秀一)