マンションと法(第三十歩)
■総会の動議(2)
前回に引き続いて、総会における動議を扱いたいと思います。前回は、動議のうち、実質的動議を扱いましたが、今回は手続的な動議(総会の運営や議事進行に関する手続な提案のこと)を扱いたいと思います。
総会における手続的な動議の具体例としては、採決方法の動議、休憩、退場、審議打切り、議長不信任の動議、会議延期・続行の動議などが挙げられます。
上記のとおり、手続的な動議は総会の運営や議事進行に関する手続的な提案のことをいうところ、総会の議事の進行については、議長に議事進行権があります。そのため、出席者からの手続的な動議は、議長に対して議長が有する議事進行権を行使することを求めることを意味していると考えられます。そして、出席者の手続的な動議に対してどのように対応するかについては、基本的には、議長の裁量に委ねられていると解されますので、議長は議場に諮る必要はなく、自ら決定することができると解されています。
しかし、手続的な動議の中でも、議長不信任の動議と会議延期・続行の提案については、議長単独で決定することができず、議長は議場に諮る必要があると解されています。
すなわち、議長不信任の動議については、議長自らの資質に関する問題であることから、また、会議延期・続行の提案については、出席者に重大な影響を及ぼす事項であることから、いずれもその性質上、議長単独で判断することができず、議場に諮る必要があると解されています。
そのため、議長不信任の動議や会議延期・続行の提案があった場合には、議長は自らの判断で当該動議にどのように対応するのかを判断するのではなく、議場に諮った上で、出席者の判断に委ねるという対応をとるべきといえます。
具体的には、議長不信任の動議が提出された場合には、議長は、議場に諮った上で、その結果について議事録に記載することになります。例えば、出席組合員から議長不信任の動議があった場合には、総会議事録において、「出席組合員より、議長の議事運営が不適切であることを理由として、議長の交代を求める旨の動議が提出されたため、議長は、議事の運営は適切に行われており、議長交代の必要はない旨意見を述べた上で、議場に諮ったところ、出席者の議決権の過半数をもって当該動議は否決された」というように「議事の経過の要領及びその結果」を総会議事録に記載して、議場に諮ったことを議事録上も明らかにする必要があります。
これに対し、手続的な動議のうち、議場に諮ることが求められない事項については、議事に及ぼした影響を踏まえた上で、議事録に記載するかどうかについて個別具体的に判断することになろうかと考えられます。
総会における実質的な動議とは異なり、手続的な動議については、事前にある程度予測可能な事項と考えられますので、事前の準備により、円滑な議事進行が実現できることになります。(弁護士 豊田 秀一)