マンションと法(第三十二歩)
■最近のマンションに関する動き
最近、マンションに関するいくつかの動きがありましたので、ご報告します。
1つ目は、マンション標準管理委託契約書が改訂されました。マンション標準管理委託契約書とは、マンションの管理をマンション管理業者に委託する際に、管理組合とマンション管理業者との間で協議がととのった事項を記載した契約書を、マンションの管理の適正化に関する法律第73条に規定する「契約成立時の書面」として交付する場合の指針として作成されたものです。そのため、管理組合がマンション管理業者との間において、管理委託契約を締結する際における契約書については、マンション標準管理委託契約書が参照されるケースが多いのではないかと思います。なお、実際の契約書作成に当たっては、個々の実情や必要性に応じて、適宜内容の追加・修正・削除を行いつつ活用されるべきものであることについては、留意が必要となります。
このような性格を持つマンション標準管理委託契約書が、この度改訂され、令和5年9月11日に公表されました。
そして、国交省が公表した資料では、改訂の主な内容として次の4項目が挙げられています。
①書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応
②担い手確保・働き方改革に関する対応(カスタマーハラスメント、管理員・清掃員の休暇取得等)
③マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応
④その他
令和3年の標準管理規約の改正内容を踏まえた事項もありますし、近年のマンションやマンション管理業を取り巻く環境の変化を踏まえた事項もあります。なお、詳細な内容については、後日検討する予定です。
2つ目は、国交省がマンションの管理組合が管理業務を外部に委託する「第三者管理」の指針改定に向けて動き出しており、令和5年度中には「外部専門家の活用ガイドライン」の改定案をまとめるという新聞報道に接しました。
役員のなり手不足解消のため、管理会社が管理者等に就任し、マンション管理を行うという方法を採用するマンションが見られるようになりました。
しかし、第三者管理を採用した場合、一方において住民の負担は減るというメリットが存在するものの、他方において管理会社が自社グループに修繕工事を発注するなどして割高な費用負担を迫られるケースが発生しているなど、そのデメリットが指摘されていました。
そこで、今回のガイドラインの改定案では、委託を受けた管理会社が修繕工事の発注先を決める際、弁護士ら外部専門家が監事の役割を担うといった監督体制のあり方について考え方を示すとされています。
こちらについても、公表され次第、内容を検討する予定です。(弁護士 豊田 秀一)