マンションと法(第三十四歩)
■『外部専門家の活用ガイドライン』の改訂の方向性(案)について
昨年末に、国交省の「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」の第3回会議(令和5年12月26日開催)において「『外部専門家の活用ガイドライン』の改訂の方向性(案)」(以下「改訂の方向性案」といいます。)が議論されました。このワーキンググループは、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ(令和5年8月)」に基づき、外部専門家等が管理組合における管理者となるケース(管理業者が管理者となり、理事会を設置しないケースが主な対象)における留意事項を示したガイドラインの整備等に向けた検討を行うことを目的として、令和5年10月に設置されました。
現在のマンションはいわゆる「2つの老い」を抱えており、管理組合の運営を担う役員(理事等)のなり手不足が問題となっています。このようなマンションの置かれた現状に鑑みると、自らが居住するマンションにおいて、外部専門家等が管理組合における管理者となる方法を選択することは時代の流れであると考えられます。しかし、このような管理形態を採用する場合であっても、マンションの管理の主体はあくまでも区分所有者等で構成される管理組合であることを忘れてはなりません。すなわち、管理業者が管理者となる方式を採用する場合であっても、マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要だといえます。
ワーキンググループでは、以上の考えを踏まえた上で、改訂の方向性案において、第三者管理方式を導入し、理事会を設置しない場合(この場合、通常の理事会方式とは異なり、区分所有者同士で話し合うための機会が総会しかなくなるおそれがあります。)においても、管理者の業務に対して区分所有者の立場から適切に意見を述べることにより、その意思を反映できる体制が必要であるという考えの下に、次の仕組みを構築することを提案しています。
すなわち、区分所有者の意思を管理者の業務に適切に反映するには、①区分所有者間の協議によりマンション管理上の重要な課題について検討でき、かつ、②管理者が当該区分所有者間の検討に基づく意見を聴くことができる体制を整えることが望ましく、その一例として、区分所有者から構成され、マンション管理上の重要な課題について協議する機関を設置することが提案されています。
そして、当該機関が果たすべき役割について、管理者が通常総会における議案を提出する前においては、提出議案について当該機関に意見を聴くようにしたり、管理者の地位を離れさせる場合には、監事において新管理者の選任、新規約の調整を行うことが想定されるところ、監事が当該機関に意見を聴くことと定めることにより、これらの重要議案に区分所有者の意見を反映させられる仕組みを構築することが提案されています。
改訂の方向性案では、上記の仕組み構築のために検討が必要となる論点が取り扱われています。現時点において、第三者管理方式を導入する具体的な予定がない場合であっても、現在の管理組合の運営方法と対比することは有益であると思います。
ワーキンググループでは、今後、令和6年1月26日の会議では「『外部専門家の活用ガイドライン』の改正案について」が検討され、同年3月26日の会議では 「『外部専門家の活用ガイドライン』改正案のとりまとめ」が予定されています。
(弁護士 豊田 秀一)