マンションと法(第三十八歩)

■『マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(案)』(1)

第34歩と第35歩の記事で取り上げた、国交省の「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」において「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(案)」(以下、単に「ガイドライン」といいます。)が公表されました。なお、今回のガイドラインからは、これまでの「第三者管理方式」という呼称ではなく、「区分所有者以外の者が管理者となる管理方式について「外部管理者方式」という呼称が用いられることになりました。また、外部管理者方式の中でも、特にマンション管理業者が管理者となる場合については「管理業者管理者方式」と定義されています。
このガイドラインは130頁にもわたりますので、何回かに分けて、その中身を見ていきたいと思います。
まず、このガイドラインは、主として、既存マンションに置いて、管理組合の担い手不足の課題への対処等を理由として外部専門家等の活用を検討している管理組合の方をはじめ、外部管理者方式の採用が見込まれる新築マンションの購入を検討している方、外部専門家や管理業者、分譲業者など、外部管理方式のマンションに関わる様々な方の参考としていただくことを想定しているとされています。
その上で、ガイドラインの第2章「外部専門家による外部管理者方式等における留意事項」では、主として、外部専門家が管理者や理事会における役員に就任している場合についての記載が、第3章「マンション管理業者による外部管理者方式(管理業者管理方式)における留意事項」では、主として、理事会が設置されておらず、かつ、管理業者が管理者に就任している場合を前提として記載がされています。
第2章の記載内容は、従前の「外部専門家の活用ガイドライン」を基にしたものですが、新たな記載箇所やその記載内容の充実が図られた箇所を中心にご紹介したいと思います。
まず、外部管理者方式を採用するに当たって管理規約を作成する際に注意すべき事項及び当該注意事項を踏まえた管理規約例がまとめられています。
具体的には、①管理者の選任・解任、②管理者の任期、③管理者の欠格条項、④管理者の誠実義務、⑤総会決議事項、⑥管理者の権限・義務、⑦組合員の総会招集権、⑧マンション管理への区分所有者の関与の各項目について、【注意すべき事項】と【注意事項を踏まえた管理規約例】が掲載されているので、実際に外部管理者方式を採用する際の参考になります。
なお、ガイドラインでは外部管理者方式の導入までのプロセスの全体像が図で示されていますので、こちらも参考になります。
次に、ガイドラインでは、標準管理規約の改正内容を踏まえて、緊急時等における取引の機動性を確保するための考え方が記載されたり、外部管理者方式の導入においての大きな懸念事項となり得る大規模修繕工事の発注における発注先選定等の透明性を確保するための手段として修繕委員会を主体として検討することが望ましいという指摘がなされています(修繕委員会が設置される場合の具体的な業務についても詳細な言及がなされています。)。
さらに、外部管理者方式では、通常の理事会方式と比較して、監事に期待される役割が質的にも量的にも増大することを踏まえ、監事のうち少なくとも1人は、外部専門家から選任することが望ましく、また、区分所有者の視点も重要であることから区分所有者からも監事を選任することが望ましいという指摘がされています。そして、①監事の選任及び担い手、②監事の権限・職務の各項目について、【注意すべき事項】と【注意事項を踏まえた管理規約例】が掲載されています。
第2章における全ての改訂箇所に言及することはできませんが、上記のとおり、管理規約例や具体的な検討事項が明記されており、今後、新築・既存マンションを問わず、外部専門家が管理者や理事会における役員に就任する際や、就任後であっても当該体制が機能しているかどうかを検証する際の指針として大いに参考になるものだと感じました。

(弁護士 豊田 秀一)