マンションと法(第7歩)
第7歩
前回の記事では認定基準(案)に関する4つの項目をご紹介しましたが、今回は、その中の「③管理組合の経理」について見ていきたいと思います。
「③管理組合の経理」の項目の中では、以下の具体的内容が規定されています。
・管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
・直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
これらの内容が意味することを考えるに当たっては、4つの認定基準(案)とともに意見公募(パブリックコメント)に付された「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(案)」の中の「2(4)管理組合の経理」の箇所が参考になります。該当箇所を引用すると、以下のとおりです。
「管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されている必要がある。このため、管理費及び修繕積立金等について必要な費用を徴収するとともに、管理規約に基づき、これらの費目を帳簿上も明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある。
また、管理組合の管理者等は、必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、マンションの区分所有者等の請求があった時は、これを速やかに開示することにより、経理の透明性を確保する必要がある。」
マンションの管理主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合であるところ、管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するとともに、マンションの資産価値の保全を図るなど、マンションを適正に管理することが要請されています。
そして、管理組合が上記役割を果たすためには、その財源である管理費及び修繕積立金等を確実に徴収するとともに、管理費及び修繕積立金等の使途(管理費は通常の管理に要する経費であり、修繕積立金は特別の管理に要する経費です。)に従った適正な管理が行われなければなりません。
このような観点から認定基準案の「③管理組合の経理」が定められているといえます。
お金を預かる以上適切な管理がなされなければならないというのは当然のことではありますが、普段からこれを意識していなければ管理組合の役員による使い込み等が発生したりします。
そして、管理費等に滞納が生じた場合には、管理組合の会計に悪影響を与え、管理組合の上記役割が果たせなくなったり、管理費等を滞納せずに支払っている他の区分所有者への負担転嫁等の弊害が生じることになります。
そのため、管理費等の確実な徴収は、管理組合がマンションの適正な管理を行う上での根幹的な事項であると指摘されているところです。
次回は、管理費等の滞納問題について見ていきたいと思います。
- 令和3年9月28日、国土交通省からマンション管理計画認定制度の認定基準等が公表されました。この記事でご紹介した認定基準(案)と基本的な方針(案)の該当箇所には変更はありません。
(豊田 秀一)