管理組合の考察(第四十六歩)

■外部専門家活用ガイドライン

新年あけましておめでとうございます。
昨年は国土交通省の外部専門家ガイドラインが改訂され、それまで不明確だった外部管理者によるマンション管理の基準が明確になりました。このガイドラインの改訂には、管理会社による外部管理者就任にお墨付きを与えたなど、管理組合の団体などから強い批判もありますが、我々マンション管理に携わる者はこの改訂ガイドラインを遵守していくことが必要だと思います。

このガイドラインの改訂は様々の影響を与えました。管理会社による外部管理者管理が激増したことです。
新築マンションにおいては、それまでタワーマンションに限られていた外部管理者管理が一般のマンションにも広がって、管理組合活動の煩わしさがないことを宣伝文句にした新築マンションも出てきました。
このガイドラインの改訂が報道機関により広く報道されたため、社会の認識度がたかまりました。
マンション管理士による第三者管理を普及する目的で、神奈川県マンション管理士会に所属するマンション管理士の有志が設立した団体(管理組合を共同運営する会)にも多数の問合せやご相談がありました。中には公共団体からのセミナーの依頼もありました。
しかしながら、相談の多くは誤解によるものです。
外部管理者管理が管理会社による理事会廃止型の全てだと誤解しており、外部管理者管理すべてが区分所有者の利益を侵すものときめつけているものがほとんどです。
改定ガイドラインでも第2章に基本となる外部管理者管理について記載されており、外部者管理でも特に区分所有者の利益を害す可能性のある管理会社による外部管理者理について第3章で詳細に述べています。
つまり、マンション管理士や弁護士、建築士など専門家による外部管理者が外部管理者管理の基本で、管理会社による外部管理者管理はいわば例外として認めるという構成になっているのです。
なぜ誤解が生じたかというと、法制より管理会社による外部管理者管理が社会現象として広まっていたことや改定ガイドラインそのものが130ページにも及ぶもので理解している人がほとんどいないからです。それにマスコミやSNS・YOUTUBEなので切り取られた情報が広まったからだと思います。
外部管理者管理はその必要性は高く、マンションの経年化など時代の要請に沿うものだと思います。
もちろん外部管理者管理には区分所有者の利益を害するというリスクは伴いますが、外部者管理にも理事会廃止型の外部管理者方式の他に、理事会存置型の外部理事就任方式や理事長補佐管理者方式等リスクの低い方式など、いろいろな方式があり、そのマンションの実情に応じて選択し、リスクの軽減化を図ってほしいと思います。
そのためには、外部管理者管理の話が出たなら、関係者以外の専門家に相談してください。
市や県などの「地方公共団体のマンション相談窓口」や「管理組合ネットワーク」などの管理組合団体にご連絡ください。
「管理組合を共同運営する会(https://kyoudou-unei.com/)」にご連絡いただいても結構です。

改訂ガイドラインは、功罪あると思います。
特に管理会社による外部者管理を公認したことには批判が大きいと思います。
しかしながら、それよりも管理会社による外部管理者を公認した法理が拡大解釈されて広まることが危険です
管理会社は適正化法で登録が必要ですし、マンション管理に必要な知識を持つ国家試験合格者たる管理業務主任者を一定数雇い、管理組合にとってリスクのある重要条項を説明させなければなりません。しかしながら、ガイドラインで認められた法理を使えば、制限なくマンションの管理者になれることになり、マンションの専門家でなくてもなれることになります。このような者が管理者になれば、管理業者以上の不利益が区分所有者にのしかかると思います。
現実に、ビル管理会社や賃貸アパートの単体物件管理会社、福祉施設の管理会社などが分譲マンション管理業界に参入を計画しているようです。
次回からは、実際に私どもに相談された管理組合がどのようにしたかをリアルタイムで報告したいと思います。

(マンション管理士 渡邉 元)