管理組合の考察(第四十七歩)

■管理組合を共同運営する会

前回、昨年6月の外部専門家活用ガイドライン改訂後、「管理組合を共同運営する会(https://kyoudou-unei.com/)」に問い合わせや相談が増えていることを述べた。
そこで今回からは、その相談内容や我々がどう対処しているかをリアルタイムで紹介したい。

実例紹介ではあるが、守秘義務があるので、依頼管理組合などの固有名詞は避けさせていただく。
依頼管理組合は神奈川以外の関東圏のマンションで、建築後30年以上経過した30戸以下の自主管理のマンションである。
我々が相談を受けた経緯は、昨年12月にこのメルマガを通して知り合った管理組合の団体(私の地元横浜なら横浜管理組合ネットワークのような非営利団体)からの相談であった。
内容はその団体に以前より管理組合運営や修繕などを相談していた管理組合があるが、様々な理由により今後自主管理を継続していくのは困難な状態だが、建物修繕は逼迫しているので、どのようにすべきかということであつた。
そこで私は、管理組合の出納・会計をしっかりした上で、外部管理者を検討するようアドバイスした。出納業務や会計業務をしっかりしないで外部管理者管理をすると、不正・不当な管理を誘発するからである。

その後、団体から管理組合の同意を得て、会計・出納業務は「クラセル」システムを使用することになったので、管理組合運営について助力して欲しい旨の再度の依頼を受けた。

マンション管理は地元密着で行うべきだという私の持論である。依頼マンションは他県にあり、横浜から片道2-3時間かかる。そこで、私は2種類の提案をした。
1つは団体が外部管理者に就任し、「管理組合を共同運営する会」が一部実務を下請する形である。改訂されたガイドラインでは団体でも外部管理者になれる事が認められたので、管理組合の団体が外部管理者になり、我々が管理業務の実務の一部を下請するスキームである。
もう1つは、クラセルサポートの顧問タイプによる管理組合への助力である。
「管理組合を共同運営する会」は昨年11月より新しいサービスとして、マンション管理アプリ「クラセル」のユーザー向けにシステムへの入・出力業務と出力したデータを分析して改善提案をするサービスを開始した。この新サービスに一般の顧問業務を加えたものを提案したのである。
その後、管理組合や管理組合団体との協議をへて、管理組合団体が外部管理者に就任し、団体の理事で管理業務主任者の資格を持つ者が管理実務を行い、私が「管理組合を共同運営する会」の担当マンション管理士として管理組合の顧問ら就任し、クラセル関連の事務と管理組合や外部管理者のサポートをすることになった。昨年12月下旬に開催された管理組合の理事会でその旨承認され、同時に本年1月に臨時総会を開催し必要な決議をえることになった。
その後、臨時総会を開催する準備に入った。
上記のスキームを実現するためには、臨時総会で次の決議が必要である。
1. 管理組合の団体を外部管理者に選任する決議
2. 管理組合の会計・出納業務にクラセルシステムを利用することを承認する決議。これに伴うクラセル利用に関連する決議。(クラセルを提供するイノベリオス社との契約締結の承認やクラセル用銀行口座開設等)
3. 「管理組合を共同運営する会」や担当マンション管理士である私との顧問契約承認決議
4. 上記スキームを実現するための追加予算の承認
5. 早急に外部管理者の下で必要な修繕工事を行うという推進決議
結果として、1月に開催された臨時総会でこれらは承認され、このスキームは計画段階から実施段階に入った。

以上のように外部管理者管理を実施するためには、管理組合の事情や希望に応じたスキームを立てることから始め、具体的な実現計画の作成や関係者との契約などの多数の準備行為が必要である。そして、それらは手続きも含めてマンション管理適正化法などに従って適法に行わなければならない。加えて、それらは区分所有者の利益を害さないようリスク管理され、適正に行うことも必要である。その意味で準備段階こそ専門家の助力が必要である。
本件では、管理組合団体が当初からかかわり、外部者管理の専門家の我々が関与する形なので成功させなければならない。
2月初めには関係者全員が集まっての、契約書の調印とキックオフミーティングが開催される。
次回はそれらを報告したいと思う。
本稿は、外部管理者管理の実現課程をリアルタイムで詳細記載していくもので、その意味では必要性がない方や興味がない方も多いだろう。そのような方はどうぞ読み飛ばしてください。

(マンション管理士 渡邉 元)