管理組合の考察(第四十八歩)

■管理組合を共同運営する会(その2)

先月、管理組合の総会にて、管理組合の団体が外部管理者になり、会計・出納業務はマンション管理アプリクラセルで行い、管理組合を共同運営する会(https://kyoudou-unei.com/)が、管理組合の顧問としてサポートする決議が承認されたと報告した。

次の段階は各当事者間の業務委託契約である。
第1は管理組合と管理組合団体との外部管理者業務委託契約であり、これが今後の運営の基本となる。
この契約は外部管理者の業務や権限を明確化するもので最も重要な契約である。しかしながら昨年の国土交通省の調査によると、既存の外部管理者業務委託では過半数が特別な外部管理者業務委託契約を作成されていないようである。
適正化法に管理会社が管理業務を受託する場合は、管理業務委託契約書の作成が義務付けられ、国家資格者である管理業務主任者の重要事項説明も法定されている。しかるに権限がより強い外部管理者には何の規制もないのが現状である。「管理組合を共同運営する会」が関与する外部管理者は、名目の如何を問わず、適正化法の趣旨に従った外部管理者委託業務契約を行なっていく。

次の契約は、マンション管理アプリクラセルの利用契約である。これは利用マンション全て共通なので、アプリを提供する会社への管理組合からの定型の申込の形式で行われる。付属の契約として、クラセル用の銀行口座の開設や、管理費や修繕積立金の自動引き落としを担当する集金代行会社への代行依頼契約も行わなければならない。管理組合の出納・会計を明らかにする為に必要である。
ちなみに適正化法には第53条により登録マンション管理業者以外はマンション管理業務を行ってはならず、登録管理会社以外はいわゆる管理会社の三大基幹業務(出納、会計の調整、修繕の調整)を一括して受託したてはいけない。外部管理者は管理組合内部の組織として見なされるので、委託業者である管理会社とは異なり、適正化法の適用は受けない。しかしながら区分所有者ではないので、管理組合にとって外部当事者ではあることに変わりはない。そこで「管理組合を共同運営する会」がかかわる外部管理者は、適正化法の趣旨は生かして、三大基幹業務は経営主体が異なるものが担当するのを原則とする。

第3は、管理組合と管理組合を共同運営する会所属のマンション管理士とのクラセルサポート顧問契約である。
クラセルは管理組合の日常の出納や会計を管理するアプリなので、アプリへの入出力作業が多く、金銭に関することなので法令に従い慎重に行わねばならない。そしてそれによって得たデータを有効に活用する事が管理組合にとって有益である。これらの業務をマンション管理士が行うことにより、管理組合役員の業務を低減させると共に、マンション管理の専門家たるマンション管理士が顧問とし管理組合とかかわり、管理組合を支える契約である。この外部管理者のスキームがうまく行き、管理組合や区分所有者の利益が侵されないよう見守るための契約でもある。

本件の事例では、関係者一同がマンションにあつまり、マンション管理士や管理業務主任者の資格を持つ者が、契約内容を説明したうえで調印した。いわば、適正化法に規定する管理業務主任者による重要事項説明である。

関係者による各契約が成立したので、次は今回のスキーム実施のための準備行為である。
私は、顧問マンション管理士として、必要な諸行為を指導していくことになる。
これについては、次回に説明したい。

(マンション管理士 渡邉 元)