マンション関係判例集(第十七歩)
■管理組合から区分所有者への訴訟① 異常行動対処 ////////
11.■行き過ぎた言動の区分所有者に行為停止請求 平26年3月6日 東京地判
概要
①管理組合の円滑な活動に支障を来すに至るまでの行き過ぎた言動のあった区分所有者に対する、規約に基づく行為差止(停止)請求
②認められた
10.■区分所有社による迷惑行為に法57条請求 東京地判 平28年3月23日
概要
①管理組合が、901号室に入居した区分所有者が、入居早々「臭い」と訴えて騒ぎ出し(悪臭の事実はない)、バルコニーや廊下に出て叫び続けたり、階下の居住者を悪臭の源と決めつけて床を踏み鳴らす等を継続したことから、総会決議を経て、契約違反行為の差止めと弁護士費用の請求等を行った
②認容された
9.■総会決議各戸ドア交換工事実施に対する妨害停止訴訟 東京高判 平28年4月27日
概要
①総会で決議された各戸ドア交換工事に応じず、また、脅迫や名誉毀損行為を行った区分所有者2名に、工事妨害の停止及び弁護士費用の支払いと、脅迫行為等の停止及び慰謝料の管理組合の支払い請求を認めた原審(H27.9.8千葉地判)
②控訴を棄却した
8.■玄関鍵返却訴訟のため弁護士着手金返還訴訟 東京高判 平28年6月29日
概要
①ホームセキュリティ業務のため管理組合に玄関錠を渡していたが、セキュリティ会社を信用できないとして返却させた区分所有者(被告)に対し管理組合(原告)が再引き渡しを求め、
②訴訟検討のために組合から弁護士に着手金(54万円)を支払った後(提訴前)に返却された
③着手金20万円の支払いを認めた原審(H28.1.29東京地裁)を変更し、管理組合からの全額の支払い請求を認めた
7.■鍵引き渡し請求訴訟の和解と弁護士費用 東京地判 平28年1月19日
概要
①組合員は住居部分の玄関鍵を管理組合に引き渡さなければならない旨管理規約で定めているマンションで、管理組合が、引き渡さない組合員に対し鍵の引渡し請求訴訟を提起し、途中で引き渡されたことから終了したが、原告が弁護士に支払った着手金(54万円)を被告に請求した
②裁判に至らなくても所要の役務の提供があったとみなし、金額を独自に算定したうえで管理組合の請求の一部を認容した
6.■修繕工事の実施を妨害する区分所有者に対する訴訟 東京地判 平26年12月25日
概要
①管理組合(被告)が修繕工事の実施を妨害する区分所有者(原告)を相手に妨害行為の禁止を求める仮処分の申し立てをした
②原告が、そのことや、それに引き続く強制執行手続きによって精神的苦痛及び経済的損失を被ったとして、不法行為による損害賠償を被告に請求した
③請求を棄却した
5.■玄関扉外部改修工事協力義務確認等請求事件 東京地判 平27年2月16日
概要
①管理組合が総会決議を経て実施した、共用部分である各居室玄関ドア外部表面にフィルムシートを張り付ける工事の協力を拒否した区分所有者(被告)に対する、訴訟費用等(弁護士費用は着手金40万円(税別)+成功報酬30万円の請求した
②着手金全額と成功報酬のうち15万円の限度で認容)の支払請求を認めた
4.■総会決議各戸ドア交換工事に応じないので訴訟 千葉地判 平27年9月8日
概要
①総会で決議された各戸ドア交換工事に応じず、また脅迫や名誉毀損行為を行った区分所有者2名に対し、管理組合とその理事長が行った工事妨害の停止及び弁護士費用の支払いと、脅迫行為等の停止及び慰謝料の支払い請求
②認めた →控訴審(H28.4.27東京高判)も維持し棄却した
3.■専有部分への立ち入り承諾に代わる判決請求 東京地判 平27年3月26日
概要
①共用部分の排水管等更新工事やアスベスト除去工事のために、必要な範囲で被告の専有部分に立ち入り、使用することを拒否した
②共同の利益を害し管理規約に違反するとして、管理組合の弁護士費用請求等を認容した
2.■占有部分の天井配水管工事立ち入り拒否訴訟 平26年8月29日 東京地判
概要
①各専有部分の天井部分に張られた共用部分である排水・汚水管の更新工事について部屋への立入りを拒む区分所有者に対し、区分法6条2項による立入承認と、57条による妨害行為の差し止めを請求
②いずれも認容された(特別の影響を及ぼすものではない)
1.■ベランダ塗装工事足場設置拒否訴訟 東京高判 平26年2月3日
概要
①ベランダ鉄部塗装工事のための専用庭への足場設置を1階の区分所有者が拒否
②共同利益背反行為と認定
■管理組合から区分所有者への訴訟 ② 建物等物理変更関係 ////////
13.■管理規約違反の看板撤去訴訟と弁護士費用 東京地判 平28年7月4日
概要
①管理組合が、区分所有者(被告会社Y1)とその代表者(被告Y2)に対し、被告らが管理規約に違反してマンションに看板を設置したとして、その撤去、原状回復及び弁護士費用の支払いを求めた
②被告会社Y1に対する看板の撤去と原状回復工事は認めたが、弁護士費用については、委任することが必須ではないとして否定した
12.■専有部分での歯科医院の経営看板撤去等請求 東京地判 平28年4月21日
概要
①管理組合が、専有部分で歯科医院を経営している被告に対し、管理規約に基づき、専有部分内から窓を通して外部に見えるように設置した看板の撤去と、弁護士費用等の支払いを求めた
②看板の設置行為はマンションの外観変更に当たり、管理規約及び使用細則に違反し、共同の利益に反する行為であるとして、その撤去と50万円の支払いを命じた ※
11.■外壁に無断設置看板撤去訴訟 平26年4月14日 東京地判
概要
①無断で外壁に設置した看板の、管理組合からの撤去請求が肯定された
(長年使用を続けてきた一部の看板については否定)
10.■マンション前通路部看板設訴訟 平26年3月27日 東京地判
概要
①管理者が、区分所有者(被告:美容室開業当時から、マンション前通路部分に工作物を設置し、その上に看板を設置)に対し、主位的に本件建物の59条競売を求め、予備的に法58 条1項に基づき本件建物の使用禁止を求めた。
一方、被告が管理者に対し本件建物について本件修復工事の施工を求めた(反訴)
②管理者の競売請求は認容し、被告の反訴請求は棄却した
9.■共用部分への看板設置 平26年1月23日 東京地判
概要
①管理組合が、建物6階部分でホテル業を経営する区分所有者に対して、共有部分である土地上に無断で看板を設置しているとして、管理権及び管理規約に基づき看板の撤去を求めた事案
②被告は看板の設置に当たって承諾を得るための規約所定の手続きを経ておらず、共用部分の土地を管理する権限を有していないとして、管理組合が管理権に基づき看板の撤去請求すること認容した
8.■増築工事をめぐる訴訟 東京地判 平28年8月10日
概要
①管理組合の管理者(原告)らが、元理事長または事務管理者として被告らが注意義務に違反して、違法な増築工事に着手する等の行為をしたとして、債務不履行、不法行為または任務懈怠に基づく損害賠償を請求した
②一部認容、一部棄却された
7.■権原なき増築で隣室外壁部分変更されたと訴訟 東京地判 平28年3月30日
概要
①管理組合が、マンション1階の建物(101号室)は権原なく増築されたもので、隣室(102号室)の外壁部分が変更されている等として、マンション建設会社や建物所有会社(被告ら)に対し明渡しや収去等を請求した
②一部認容した
6.■貫通孔の原状回復訴訟等 東京高判 平28年4月21日
概要
①管理組合が区分所有者と締結した 1)前所有者が壁に開けた貫通孔の原状回復を行うまでの損害金を支払う 2)看板の設置代金を支払うとの合意が、錯誤無効(日本語が不自由)または公序良俗違反(他の区分所有者との差別的取扱い)であると一審被告が主張
②否定し、合意に基づくとの一審原告の請求を認めた控訴審(H27.7.23東京地判)を維持した
5.■管理組合による所有者と賃借人への原状回復訴訟 東京地判 平28年3月29日
概要
①管理組合が、前区分所有者、現区分所有者、区分所有者からの賃借人等の被告会社4社に対し、原状回復工事及び明渡し、規約に基づく違約金等を請求した
②いずれも棄却された
4.■1室を管理組合に無断で2室に分けて登記した管理費債務 東京地判平27年12月17日
概要
①Y社所有2709号室とY2社所有2812号室は、Y社所有旧2709号室をY社が管理組合(原告)に無断で、28階部分を分けて2812号室として区分登記したもので、管理規約上は旧2709号室を共有しているといえることから、旧2709号室についての管理費等は、不可分債務としてY社とY2社が連帯して責任を負うべきであるとされた
3.■共用部分の階段モルタルスロープ化と共同の利益 東京立川支判平27年11月26日
概要
①管理組合が、マンションの店舗の区分所有者と経営者に、 1)共用部分において他所から運んできた廃棄物の保管又は分別する行為、 2)共用部分の階段部分をモルタルでスロープ化したことが共同の利益に反する行為であるとして、区分法57条に基づき、1)の行為の停止、2)の原状回復および3)弁護士費用等の支払いを求めた
②1)と3)の請求を認容した
③→控訴審のH28.4.27東京高判で棄却された
2.■共用部分の利用方法 東京地判 平26年11月19日
概要
①管理組合が、区分所有者Aに対し、Aが部屋を賃貸した宅配寿司店が共用部分にプロパンガスのボンベを設置することや換気口の使用等を禁止した(共用部分の利用方法として是認できない)ことに対し、
②管理組合の不法行為責任が認められなかった
1.■前所有者が壁に開けた貫通孔の原状回復義務訴訟 東京簡判 平27年2月23日
概要
①管理組合(原告)が区分所有者(被告:中国生まれで日本語が不自由)と締結した
1)前所有者が壁に開けた貫通孔の原状回復を行うまでの損害金を支払う
2)看板の原状回復を行うとの合意
②公序良俗違反で無効であるとした
■控訴審 東京地判 平27年7月23日
①合意が、錯誤無効(日本語が不自由)または公序良俗違反(他の区分所有者との差別的取扱い)であるとの被控訴人(一審被告)の主張を否定し、
②合意に基づくとの控訴人(一審原告)の請求を認めた(看板設置料支払いの将来給付は否定) 上告審(H28年4月21日東京高判)も控訴審を支持した
■管理組合から区分所有者への訴訟 ③ その他 ////////
7.■看板設置料の増額確認訴訟 東京地判 平28年1月28日
概要
①管理組合が、区分所有者に賃貸している看板の設置使用料がH25年6月総会で議決した25万円/月であることの確認等を請求した
②H13年3月に2万円/月だったものが別の訴訟事件の和解(H23年6月)で10万円/月に増額され、さらに25万円/月とされたことは被告に多大の不利益を及ぼすとして、被告が承諾していない以上本件議決に基づく増額の効果は発生していないとした
6.■事業用の物件管理費倍額規定の有効性 東京地判 平27年12月17日
概要
①管理組合が、事務所として使用している区分所有者に、事業用物件の管理費を通常の2倍とする規約が適用される旨主張して未払い管理費等を請求した
②反訴事件で、規約の規定及び理事会決定を法30条3項(利害の衡平性)に反し無効であるとして、既払いのうち過払い分(約409万円)等の返還を求めた
③区分所有者の主張を認容した
④→H28.5.19東京高判も支持(規約の無効性は否定した)
5.■管理組合員確認訴訟 東京地判 平28年6月23日
概要
①原告が区分所有権者であり、管理組合の組合員であるとして、1)管理組合の組合員であることの確認を求めると共に、2)管理組合が訴訟手続等において原告が組合員でないと主張したことが不法行為を構成するとして、損害賠償金(5万円)の支払いを求めた
②事案で、1)は確認の利益を欠くとして却下し、2)は理由がないとして棄却した
4.■区分所有者が管理組合に訴訟 東京地判 平28年5月13日
概要
①区分所有者(原告)が、管理組合被告に、原告と被告間で係属した別の訴訟で、管理組合の虚偽の主張により間違った判決が下されたため、所有店舗に居住できなくなり、引越しを余儀なくされ、弁護士費用等を支払わざるを得なくなった他、いじめを受けたこと等により経済的精神的損害を被ったとして、H4年当時の管理規約の規定の復活と慰謝料の支払いをもめたが
②前者は却下(不適法な訴え)、後者は棄却(理由がない)された
3.■インターホン修理依頼費用等支払い訴訟 東京地判 平28年8月5日
概要
①管理会社(控訴人)が、マンションの賃借人(被控訴人)からインターホンの修理を依頼され、業者を手配等対応したとして、業者への支払い費用や自社社員の立ち合い費用及び不法行為に基づく損害賠償を請求
②損害賠償を除き認容された1審(東京簡判H27.12.4)を不服として控訴した
③1審を支持し棄却した→上告審のH28.12.20東京高判でも棄却した)
2.■大規模修繕工事時区分所有者宅のベランダ人工芝取替費用東京 高裁平27年1月28日
概要
①控訴人管理組合が、大規模修繕工事の際に行った区分所有者宅のベランダ人工芝取替復旧工事費用(16万円強)等を管理組合の損失として請求した
②原審を維持し棄却した
③(業者が大規模修繕工事の一環で人工芝を剥がす際に破損したため、無償で貼り直したものであり、控訴人管理組合の損失ではない
1.■管理組合は権利能力なき社団に該当しない判例 東京地判 平27年2月18日
概要
①原告(管理組合)が、自身を、権利能力のない社団であり、法3条所定の区分所有者の団体であるとして、区分所有者の一人(被告)に対し管理費等やビルの耐震補強工事負担金(合計約408万円)を請求した
②原告は、権利能力のない社団として存立していると評価可能な実態を備えていない(権利能力なき社団に該当しない)として請求を棄却した
以上