マンション関係判例集(第二十八歩)

区分所有者と賃貸借訴訟①///////////////

29.■共用部分の看板設置の管理組合の承諾なしで閉店の原因 東京地判 平28年1月19日
概要
①飲食店を開業するため原告が不動産業者(被告)を仲介してビルの2階を借用したが共用部分への可動式看板の設置は管理組合等の事前承諾が必要として閉店に至った原因は、被告の詐欺(虚偽の説明)によるものとして、損害賠償を請求した
②被告に不法行為(詐欺)があったとは認められないとして棄却された

28.■賃料減額請求事件 東京地判 平28年3月30日
概要
①マンションの専有部分を区分所有者(被告)から借用してカフェテラスを経営している会社(原告)が、借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求権の行使により、賃料と共益費が減額されたと主張した
②一部が認容された

27.■店舗の賃借人から賃貸人への水道電気料金関係訴訟 東京地判 平27年9月29日
概要
①店舗の賃借人が、賃貸人の相続人等に、賃貸人が賃借人が支払う義務のない水道電気料金や滞納賃料を請求し、また敷金償却を行ったことは詐欺等に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償や不当利得返還請求した
②一部(電気料金に関する不当利得)を認容しその他は棄却した

26.■転貸借契約と滞納賃料・管理費請求 東京地判 平27年12月4日
概要
①転賃貸人が転賃借人に対し、区分所有建物に関する転貸借契約に基づき未払い賃料や未払い管理費等の支払いを求めた
②保証金返還請求金と未払い賃料等の相殺により、被告の原告に対する賃料債務は消滅しているとされ、棄却された

25.■賃借料滞納で契約解除と信頼関係破壊の法理 最高判 平27年4月25日 
概要
①賃料の不払いが正当の限度を超えている場合にも、そのことを理由に賃貸人が契約を解除することができるためには、賃貸借関係に関する信頼関係が破壊されると認められる程度に至っていることが必要であると判示

24.■マンション賃借人による煙突交換請求訴訟 東京地判 平27年9月30日
概要
①マンション賃借人が賃貸人に対し、 1)居室の煙突の交換を求めると共に、2)被告が原告の名誉を侵害したとして侵害行為の差止めや慰謝料の支払い等を請求
②いずれも棄却された ※修繕義務・侵害行為の差し止め請求及び立証・損害賠償

23.■マンション譲受人による家賃値上げ訴訟 東京地判 平27年9月29日
概要
①区分所有建物の所有権を取得して賃貸人の地位を承継した原告が、賃借人(被告)に対して、賃料が不当に低額(管理費等込みで約60万円/月)であるとして借地借家法32条1項(借賃増減請求権)に基づいて賃料増額請求し賃料額の確認を求めた
②周辺事例より低額であることを認め、約71万円/月であることを確認した

22.■滞納賃借人への損害賠償訴訟 東京地判 平27年8月6日
概要
①賃貸人(控訴人)が、賃料(空手道場として使用)を滞納した賃借人(被控訴人)に対し原状回復費用等の損害賠償を請求原審の損害額(3万円強)認定を不服として控訴
②壁に打ち込んだ部材の引き抜き費用の損害額30万円を認めたもののその他(タイルカーペット張替費用等)の原状回復義務は認めず請求を棄却した

21.■賃貸マンション 滞納張り紙督促の違法性訴訟  東京地判 平26年9月11日 
概要
①賃貸マンションでの借主滞納賃料の催促方法(貼り紙等)が違法であると判断され、慰謝料及び遅延損害金の請求が一部認容された。
②(貼り紙は1か月分の賃料の督促の方法としては社会通念上相当性を欠く違法なものであると判断された)
③過去の判決で貼り紙による催促の仕方によっては、社会通念上是認されると判断された事例もある(S62.3.13東京地判、判例時報1281号、RETIO10-019)

20.■マンション賃貸人の更新拒絶をめぐる訴訟 東京地判 平28年7月26日
概要
①区分所有権を取得して1階部分の賃貸人となった原告が、賃借人(被告)に対し賃貸借契約の更新を拒絶し、該拒絶には正当な理由があるから期間満了により終了した旨主張して、1階部分の明渡しと明渡しまでの賃料相当損害金の支払いを請求
②被告に比し原告による1階部分の使用の必要性が高くないとして、正当な理由と認められず棄却された

19.■老朽化(築40年)と耐震性不足で建替のため更新拒絶訴訟 東京地判平27年9月17日
概要
①医療法人等と店舗の賃貸借契約を締結した賃貸会社が、建物の老朽化(築40年)と耐震性不足による建替のため正当事由の存在する更新拒絶を行い、期間満了で終了したとして、店舗の明渡しと返還履行遅滞による損害賠償(賃料相当)請求した
②被告による店舗の必要性も認め更新拒絶の正当性(借地借家法28条)を否定した

18.■賃貸マンションでの自殺で大家による賠償請求範囲 仙台地判 平27年9月24日
概要
①賃貸住宅での自死によって物件に心理的瑕疵が生じたとして、マンション全戸について賃料減額分やリフォーム費用等を大家が請求した
②損害賠償責任の発生する範囲を自死のあった当該部屋に限定し、その期間を6ヶ月に限定した

17.■賃借人自殺による連帯保証人への賠償請求範囲 東京地判 平27年9月28日
概要
①貸主が、連帯保証人に対し、借主の自殺によって被った損害の支払を求めた
②貸主の請求した原状回復費は逸失利益において評価されるべきとして、また、賃貸物件の用途・立地等考慮すれば、逸失利益は当初の1年を賃貸不能期間、2・3年は賃料の半額でなければ賃貸できない期間とみるのが相当であるとして、請求額が大幅に減額されたうえで、認容された

16.■マンション自殺物件賃貸訴訟 大阪地判(高判?) 平26年9月18日
概要
①弁護士が、マンションの1室を競売で取得した直後に元所有者の妻が自殺したことを発見した事実を伏せて、賃貸に出し新婚夫婦が入居したが、住民から事故物件であることを知らされたことから、賃貸人に対し引っ越し代や慰謝料を請求した事案
②「1年数か月前に居住者が自殺したとの事実があることは、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥であり、目的物が通常有すべき品質・性能を欠いており瑕疵に当たる」と判断したうえで
③「賃貸人は、信義則上この事実を告知すべき義務があった」と認定した

以上