マンション関係判例集(第8歩)

第8歩

〇滞納管理費訴訟と仮執行免脱宣言

1.■滞納管理費訴訟と仮執行免脱宣言 東京地判 平28年4月28日
概要
①管理組合が、区分所有者に対し滞納管理費等の支払いを請求し、被告は請求の棄却と仮執行免脱宣言(民訴法259条3項:裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる)を求め、請求原因は否認ないし争うと答弁し、和解を希望した
②被告の申立を棄却して原告の主張を認めた

〇管理費滞納訴訟と総会決議の瑕疵等

5.■管理費滞納と総会決議瑕疵訴訟 東京地判 平28年3月8日
概要
①区分所有者が滞納した管理費等の支払い請求をした管理組合の主張が認められた原審(H27.7.9東京簡判)
②総会決議に瑕疵等がある等として控訴したが、棄却された

4.■管理費滞納訴訟は総会決議事項か? 東京判 平27年12月24日
概要
①管理組合が、総会の決定等を経ずに区分所有者に対し滞納管理費等の支払い請求訴訟を提起したことが違法であるとして、簡裁に提訴して棄却された原告が控訴
②管理規約には理事会の決議を経て理事長が法的措置を執ることができる旨定めているとして、控訴を棄却した

3.■管理費滞納遅延損害金免除と総会決議 金訴訟 東京簡判 平27年10月23日
概要
①管理組合が区分所有者に対し未払管理費等と遅延損害金(年18.25%(日歩5銭))の支払いを求めたところ、遅延損害金については管理会社から免除されたことから支払い義務がない旨主張した
②管理組合が債権を放棄するには総会決議(過半数)が必要にもかかわらず、その形跡が窺えないとして、原告の請求を全て認容した
③※控訴審(H28.6.15東京地判)でも維持し棄却したが、遅延損害金については被控訴人が減縮した14.6%(日歩4銭)に変更した→H28.11.8東京高判(上告審)でも支持し棄却

2.■管理費用決定額と規約に別段の定めに関する訴訟  東京高判 平28年4月20日
概要
①管理費用9900円/月と定めた総会決議は、規約に別段の定めでないため、無効 (区分法19条違反)であり、正しくは9800円/月であるとして、区分所有者が管理組合に対し不当利得の返還を請求した
②同条のいう「規約に別段の定め」がある場合に該当するとして棄却されたH27.11.26さいたま地裁越谷支判の控訴審で、控訴棄却された

1.■管理費額決定総会決議無効訴訟 さいたま地裁越谷支判 平27年11月26日
概要
①管理費用9900円/月と定めた総会決議は、持分割合に応じたものでないため、無効(区分法19条違反)であり、正しくは9800円/月であるとして、区分所有者が管理組合(被告)に対し不当利得の返還を請求した
②同条のいう「規約に別段の定め」がある場合に該当するとして棄却された
③→控訴審のH28.4.20東京高判で棄却された

 

〇管理費滞納訴訟と自己破産

3.■管理費滞納訴訟と自己破産 東京地判 平26年11月27日
概要
①管理組合(原告)が区分所有者(被告)に対し、管理費等の支払い約343万円と遅延損害金(年18%)を支払うよう求めた
②被告も事実を認めたが、破産手続開始決定日までの約263万円について免責した

2.■自己破産した区分所有者等からの管理費支払い不能の責任 東京地判平27年1月29日
概要
①管理費等の滞納を放置したことから、自己破産した区分所有者等からの管理費等を支払不能にさせたとして、管理組合が管理業者に損害賠償請求した
②督促規定の範囲で督促しているとして棄却した

1.■破産免責者都営住宅滞納明け渡し訴訟 東京地判 平26年10月27日
概要
①破産免責を受けた都営アパートの家賃滞納者に対する、従前の和解条項(滞納の場合は退去)に基づく明渡強制執行は認められないとした

 

〇管理費滞納訴訟 相続放棄等

2.■滞納管理費と相続放棄と相続財産法人への訴訟 東京地判 平28年5月16日
概要
①管理組合が、区分所有者であった亡Aの相続財産法人(被告:亡Aの法定相続人全員が相続放棄したことから成立)に対し、未払い管理費、水道料及び弁護士費用等の支払いを求めた
②被告が抗弁した時効(5年)消滅分を除いた範囲で認容した

1.■管理費滞納者の相続人が相続放棄したと主張 東京地判 平27年10月13日
概要
①管理組合が、区分所有者であった亡Aの相続人(子)2人に未払い管理費等や駐車場使用料の支払いの他、違約金としての弁護士費用の支払い請求訴訟
②被告らは相続の放棄を行ったと主張したが、放棄手続が履行された証拠がないとして、管理組合の請求を全て認容した

 

〇管理費滞納訴訟 相続人へ訴訟

3.■相続人に対する未払い管理費連帯支払い訴訟 東京地判 平26年12月18日
概要
①等価交換方式で建設した亡母から持分(42.5%)を相続した被告等(区分所有者3名)に対し原告(管理会社)が未払管理費の連帯支払いを求めた
②前訴和解における計算方法(発生管理費の内専有部分の割合に応じた金額を被告が負担する)は合理的であるとして、請求を認容した

2.■相続人に対する管理費滞納分の請求訴訟 平26年1月17日 東京地判
概要
①管理費等を滞納した区分所有者Bが失踪により死亡とみなされたため、管理組合が、相続したCと被告Y(Bの兄)に管理費等を請求した事案
②被告は①相続放棄と②破産免責の抗弁を行ったが、②については認容されたが、①については3か月の熟慮期間満了により無効であるとされた

1.■離婚後のマンションローン・管理費支払い訴訟 東京地判 平27年9月30日
概要
①原告が、元夫(亡Y)が離婚時に合意したマンションのローンや管理費を支払わず出捐を余儀なくされたとして、亡Yの後妻(亡Y訴訟承継人)に対し、約473万円の不当利得返還訴訟を行った
②原告において支払う旨の合意が成立していたとして、棄却された

 

〇管理費滞納訴訟 時効

8.■管理費滞納訴訟と時効 東京地判 平28年7月28日
概要
①管理組合が、滞納管理費等の支払を約束した被告Y1とY1の債務を重畳的債務引受(新しい債務者がもとの債務者と並んで債務者になる)したY2(Y1の夫)に対し、未払残額と遅延損害金の連帯支払を求めた
②被告らの時効消滅等の主張を否定し、原告の請求を認めた

7.■管理費滞納訴訟と時効 東京地判 平27年11月24日
概要
①管理組合が、区分所有者に管理規約に基づき滞納管理費等の支払いを求めた
②一部の消滅時効を認め、一部の請求を認容した

6.■前所有者の滞納管理費支払い訴訟と時効援用 横浜地判 平27年11月17日
概要
①管理組合が、C社から区分所有権を特定承継した区分所有者にC社が滞納した管理費等の他、弁護士費用を請求した事案で、原告主張を認めた
②被告が、民法169条の消滅時効を主張したが、C社が消滅時効を援用しないまま別事件(原告からC社に対する管理費等支払い請求事件)の認容判決が確定したとして、C社から債務を承継した被告が時効を援用することは、既判力に反し許されないとした
③→控訴審(H28.4.13東京高判)でも維持し棄却した

5.■管理費滞納と承認による時効中断 東京地判 平26年11月28日
概要
①管理組合(原告)が区分所有者(被告)に対し、未払い管理費等(弁護士費用を含む)約202万円の支払いを請求し、被告が消滅時効(商法522条(商事消滅時効)の5年)を援用した
②原告との面談時の言動(「払うべきものは払いますから」などの発言)により債務の承認(時効の中断)があったとして、原告の請求が全て認容された

4.■管理費滞納訴訟と時効 東京簡判 平27年7月9日
概要
①管理組合(原告)が、マンションの前所有者と前所有者から取得(特定承継)した区分所有者(被告)が滞納した管理費等の支払い請求をした
②消滅時効が5年との被告主張は認め、その範囲で算定した弁護士費用を含めた請求を認容した控訴審(H28.3.8東京地判)と上告審(H28.9.15東京高判)で棄却された

3.■特定承継人への滞納管理費等の請求と時効消滅 東京地判 平27年7月16日
概要
①特定承継人への滞納管理費等の請求訴訟に対して時効消滅を主張した
②管理費等の滞納者から区分所有権を転々譲渡された区分所有者(承継人)が管理規約に従って管理組合に組合員資格を届け出なかったこと等の事情から、特定承継人の消滅時効の援用が信義則に反し、権利の乱用に当たるとして、原判決(H26.12.18東京簡判)を取消し控訴人(管理組合)の請求を認容した
③管理費等の滞納者の区分所有権を競売手続きで買い受けた後、他に区分所有権を譲渡し、訴訟の提起時は区分所有権を失った場合において、中間の区分所有者が特定承継人であると判断した ※管理費等請求控訴事件

2.■管理費滞納訴訟と時効中断 平26年7月1日 東京地判
概要
①管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等と弁護士費用を請求した事案で、本訴提起が裁判上の請求に当たり、請求権の消滅時効は一部中断したとして、時効消滅を肯定し、弁護士費用としては着手金相当額を認容した

1.■管理費請求権の消滅時効期間 平16年4月23日  最二小判
概要
①滞納管理費等(特別修繕費を含む)の5年を経過した部分
②民法169条の定期給付債権として、5年は時効で消滅しているとの区分所有者の主張を認容した

 

〇管理費滞納訴訟 遅延利息

5.■滞納管理費の遅延利息 東京地判 平28年6月15日
概要
①管理組合が、区分所有者に対し、未払い管理費等と遅延損害金(年18.25%(日歩5銭))の支払いを求めたところ、原審(H27.10.23東京簡判)は全て認容した
②区分所有者の控訴は棄却したが、遅延損害金については被控訴人が減縮した14.6%(日歩4銭)に変更した
③→上告審のH28.11.8東京高判も支持した

4.■滞納管理費訴訟と起算日 東京地判 平27年11月30日
概要
①管理組合が、区分所有者に対し、未払いの管理費、修繕積立金、水道使用料と遅延損害金及び弁護士費用の支払いを求めた
②起算日を訂正したが全額を認容した

3.■管理費滞納の遅延利息算定基準 東京簡判 平27年10月23日
概要
①管理組合が区分所有者に対し未払管理費等と遅延損害金(年18.25%(日歩5銭))の支払いを求めたところ、被告が、遅延損害金については管理会社から免除されたことから支払い義務がない旨主張
②管理組合が債権を放棄するには総会決議(過半数)が必要にもかかわらず、その形跡が窺えないとして、管理組合の請求を全て認容した
③※控訴審(H28.6.15東京地判)でも維持し棄却したが、遅延損害金については被控訴人が減縮した14.6%(日歩4銭)に変更した →H28.11.8東京高判(上告審)でも支持し棄却

2.■1ヶ月につき1000円の延滞損害金は過大ではない 平26年4月8日  東京地判
概要
①「1ヶ月につき1000円の延滞損害金を加算して、その組合員に請求するものとする」との定めに関し、年率に換算すると80%の高利になることから、公序良俗に反し無効であると訴訟
②「本件細則が定める延滞損害金が著しく過大であるとはいえず、これを公序良俗に反し無効であるということはできない」

1.■管理費の遅延損害金を年30%は違法でない 平20年1月18日 東京地判
概要
①管理費の遅延損害金を年30%は違法として訴訟
②管理規約は、非対等な契約当事者間の消費者契約とは異なり、管理費の遅延損害金を年30%としても消費者契約法の適用対象とならず、公序良俗に反するとも認められない

 

〇管理費滞納訴訟 弁護士費用・司法書士費用

8.■管理費等請求控訴事件 千葉地判 平28年6月17日
概要
①管理組合が、1)区分所有者が滞納した管理費等と2)司法書士費用の支払いを請求した原審(H27.11.19松戸簡判)が1)について認容した
②区部所有者が控訴し、管理費等の支払い請求を拡張(約36万円→約50万円)し、イ.管理費等が区分所有者間の利害の衡平が図られていない、ロ.管理に過失があり相殺すべきである旨主張した
③区分所有者の主張が認容された
④→上告審(H28.12.15東京高判)でも支持された

7.■滞納者に対する訴訟と司法書士費用 松戸簡判 平27年11月19日
概要
①管理組合が、区分所有者に、滞納管理費等と司法書士費用を請求した
②滞納管理費等の請求については認容したものの、司法書士費用(弁護士費用等) の請求については、規約や総会決議で負担させる旨定めていない(管理規約は、理事長による訴えの提起についての定めである)として棄却した
③(H28.6.17千葉地判)と上告審(H28.12.15東京高判)でも支持された

6.■管理費滞納者訴訟の弁護士費用等 東京地判 平27年11月5日
概要
①管理組合が管理費等滞納区分所有者に請求した管理費等及び違約金としての弁護士費用の支払いを認容した
②区分所有者(反訴原告)が管理組合に対し、マンションで実施した排水管改修工事に自宅が除外されて損害を被ったとして損害賠償を求めた
③非協力(入室拒絶)により施工できなかったとして棄却された

5.■滞納管理費訴訟の弁護士費用認める 東京地判 平27年10月28日
概要
①管理組合から、区分所有者に滞納管理費(約199万円)を請求した
②訴え提起後に弁済した約199万円を除く、約定遅延損害金約54万円と滞納に係る違約金(弁護士費用)17.5万円の支払いを認めた

4.■滞納管理費返還訴訟と弁護士費用 東京地判 平27年11月16日
概要
①101号室を所有する被告会社Yと203号室を所有する被告会社代表者(被告Y1)が、断続的に管理費等の滞納を繰返した
②管理組合から遅延損害金と弁護士費用を含め支払い請求を認めた

 3.■管理費滞納訴訟 東京地判 平26年11月19日
概要
①管理組合が、区分所有者が滞納した管理費、違約金等を請求し一部認容を受けたが、不服として控訴を提起し請求を拡張(違約金としての弁護士費用およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた)した事件
②区分所有者が出頭せず係争事実を自白したとみなされ、管理組合の請求を認めた

2.■管理費滞納訴訟と弁護士費用等の違約金規定  東京地判 平27年6月15日
概要
①管理組合(被控訴人)が区分所有者(控訴人)に対し、管理規約に基づき未払管理費の支払いを求め認容された原判決を不服として控訴した事件で、棄却された
②弁護士費用等違約金の規定は、強制執行費用等が新管理規約設定後に発生するものであれば適用される)

1.■管理費等滞納者が支払う違約金としての弁護士費用 平26年4月16日 東京高判
概要
①管理費等の未払(約512万円)者に対し、違約金として回収に係る弁護士費用全額を負担させる旨の規約ヲ巡る訴訟
②有効とされ、実額請求(管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用(実費相当額)で約103万円)を認めた  (1審の東京地判は、弁護士費用を「裁判所の認定する相当額(50万円)」)

 

〇滞納管理費請求妨害訴訟

3.■滞納管理費請求妨害訴訟 東京地判 平28年7月25日
概要
①管理組合(原告)が、
1)区分所有者(被告会社Y4)に対し未払管理費等を請求するとともに、
2)被告Y6(Y4の代表者)がダミー会社を利用して建物に登記手続をすることにより1)の未払管理費の請求等を妨害したとして、不法行為に基づき損害金と調査のための弁護士費用を請求した
②管理組合の請求を認容した ※所有権移転請求権仮登記等抹消登記手

2.■管理費滞納者の承継任への詐害行為取消等請求事件 東京地判 平27年4月30日
概要
①前所有者の滞納管理費等を承継したものの取得後も管理費等を支払わなかった債務者(会社)から区分所有建物を譲渡され所有権移転仮登記をした被告(債務者のオーナー会社)に対して
②管理組合(原告)からの、詐害行為取消権に基づく当該譲渡の取消しと仮登記抹消登記手続請求を認容した

1.■マンション管理費等請求事件 平26年3月7日 東京地判
概要
①管理組合が、①現所有者会社Yと前所有者会社Xに対し請求した滞納管理費の支払い請求と、②Yに対する管理費等債権を被保全債権として、Yが被告会社Zと締結した抵当権設定契約の詐害行為取消し訴訟
②認めた

 

〇滞納管理費の第三者弁済の受領拒否

1.■滞納管理費の第三者弁済の受領拒否 東京地判 平28年1月27日
概要
①管理組合にAの管理費等約109万円を第三者として弁済した原告が、管理組合 が弁済金の受領を拒否したことから、いかなる債務にも充当されていないにも係らず、弁済金を管理組合が返却しないことは不当利得等に当たるとした
②しかし弁済金は、遅延損害金(約44万円)に先に充当され、残額が元本に充当されたとして、返還請求は棄却され

 

〇管理費滞納訴訟 共有マンション

3.■離婚後の共有マンションの滞納管理費訴訟 東京地判 平28年2月25日
概要
①被告Y(持分9/10)とY1(持分1/10)が所有する(H26年6月に離婚に伴う慰謝料債務の弁済に代えてY1の持分をYに譲り渡した)マンションの管理費等を滞納したとして管理組合が請求した管理費等や損害金等の支払い訴訟
②1)両被告連帯分2)Y負担分を全て認容した

2.■滞納管理費と共有者責任 東京地判 平27年12月10日
概要
①管理組合が、滞納管理費等の支払い請求を行った事案で、共有者である被告Y1)は被告(Y)に対する貸金債権の保存のため所有名義人となっただけで、実際の使用者はYで管理費等はYが支払う約束であると主張した
②YとY1が連帯して支払うよう命じられた

1.■滞納管理費と共有者である離婚者への訴訟 東京地判 平27年11月30日
概要
①管理組合が、区分所有者であるYと共有者でその元妻であるY2を被告として未払い管理費の支払いを求めた
②別居や離婚をしたとしてもY2は共有者であり、Yと連帯して支払う義務があるとした

 

〇管理費滞納訴訟 所有者変動のケース

10■管理費98万滞納物件競落者に弁護士費用26万含めて訴訟 東京地判 平28年7月15日
概要
①前所有者が管理費を滞納した部屋を競売で取得した被告Y1とY2(Y1の長女)に対し、被告ら滞納分も含め、管理組合がその支払い(約98万円)と弁護士費用(約26万円)の支払いを求めた
②管理組合の主張を認容した
(当初Y1とY2が共同取得し、その後Y1に移転登記したことから、被告らがY2への請求を否定したが、中間特定承継人Y2にも支払い義務があるとした)

9.■前所有者の管理費滞納と現所有者への訴訟 東京地判 平28年5月18日
概要
①管理組合が、管理費等を滞納している区分所有者に対し支払い請求をしたが被告は同室の区分所有者ではなく、錯誤による抹消手続がされている(所有者は前所有者のDである)と主張した
②前所有者Dとの間で売買契約が締結されていると認定し、被告主張を否定した

8.■マンション譲受人の前所有者の管理費滞納支払い責任 東京高判 平28年4月13日
概要

①管理組合が、C社から区分所有権を特定承継した区分所有者に対し、C社が滞納し管理費等の他、弁護士費用を請求した
②管理組合主張を認めた原審(H27.11.17横浜地判)を支持し、控訴を棄却した

7.■売り主の滞納管理費は聞いていないと買主が反論 東京地判 平27年11月30日
概要
①管理組合が区分所有者に対し、未払い管理費の支払いを請求した事案で、被告は前所有者(売主)から購入した際管理費の滞納があると聞いていないため、支払い義務はないと反論
②特定承継人として支払い義務を負うべきであって、被告の認識に左右されるものではないと否定し、請求を認容した

6.■競落者による前所有者滞納管理費時効訴訟 平26年2月13日 東京地裁
概要
①管理組合が、競売で一室を取得した区分所有者に対し、前所有者が滞納した管理費等102万円の支払いを求めたが、被告が管理費等の決議に関する瑕疵等の存在と、管理費等の消滅時効を主張して争った
②消滅時効の一部を認め23.8万円に減額した他は、原告の主張を認容した

5.■未払い管理費の承継訴訟 平26年5月27日  東京地判
概要
①譲受人(特定承継人)は、譲渡人の管理経費未払いの存在を知らなかったとしても支払義務を引き継ぎ、知らないことに関する過失の有無を問わない

4.■リゾマン管理費滞納競売訴訟 平26年7月15日 東京地判
概要
①リゾートマンションを競売で取得したが、前所有者の未払い管理費等(約251万円)と取得後の管理費等も支払わず(合計約319万円)、管理組合から求めた59条競売請求権
②認容された

3.■滞納光熱水費の特定承継人への請求訴訟 平20年4月16日  大阪高判
概要
①専有部分に関する事項(水道光熱費の一括管理徴収)は、原則規約で定めうる事項ではないが、特段の事情(ライフラインの確保)を認め規約事項とすることを認容した
②滞納された光熱水費も特定承継人に請求できるとした
H25.2.22名古屋高判は特段の事情なしと判断して、請求を否定した

2.■特定承継人への滞納水道料金等の請求 平25年2月22日  名古屋高判
概要
①専有部分の各戸の水道料金の支払額、支払方法、特定承継人への支払い義務の承継を規約で定めた効力
②特段の事情のない限り、(管理目的ではないことから)効力を有しないと判断
(※№42のH20.4.16大阪高判は特段の事情ありと判断)

1.■滞納管理費は中間取得者も支払い義務を負う 平20年11月27日  東京地判
概要
①区分所有権がA→B→Cと移転した場合、中間取得者Bは、元の区分所有者Aが滞納していた管理費等に加え、滞納賃料(駐車場賃料等)の支払い義務に関する訴訟
②法8条の「債権」として支払義務を負う

 

〇管理費滞納者に対する将来分を含めた費用訴訟

2.■管理費滞納者に対する将来分を含めた費用訴訟 東京地判 平27年11月6日
概要
①駐車場使用料を含む管理費等を約7年にわたり滞納した区分所有者に管理組合が弁護士費用(約79万円)や遅延損害金を加え、かつ将来分を含めて支払いを求めた
②将来給付の訴えの利益があると、原告主張のいずれも認容した(弁護士費用についても管理規約中に実費全額を負担させる旨の規定がある)

1.■管理費滞納訴訟と将来請求 東京地判 平27年9月15日
概要
①管理組合が区分所有者に対し、未払い管理費、修繕積立金及び水道料並びに将来請求として管理費及び修繕積立金の支払いを求め認容された

 

〇管理費等請求に対する相殺の抗弁

2.■管理費等請求に対する相殺の抗弁 前橋地裁高崎支判 平28年1月19日
概要
①管理組合Xが、区分所有者Yに対し、管理規約に基づく町内会費、管理費及び修繕積立金の各支払、Xが立替支払いをしている電気料金及び水道料金に係る不当利得の返還並びに所定の違約金の支払を請求した
②Yの相殺の抗弁(専有部分の水漏れの原因が共用部分管理の瑕疵にあり、管理組合は工作物責任による債務不履行責任を負う)を認めてXの請求を棄却した
③→控訴審(H29.3.15東京高判)で取り消され、Yの相殺の抗弁は認められないとしてXの請求が全部認容された →上告審(H29.7.27最一小決)でも指示し上告不受理

1.■マンション管理費相殺請求控訴 平26年1月20日
概要
①管理組合が、未納の管理費等の支払いを区分所有者らに求め原審が認容し、控訴人らが控訴を提起した事案
②「被控訴人が必要な工事を行わないことから、代わって立て替え払いをしている。したがって控訴人は管理費等を支払わない。」との主張を否定して、控訴を棄却した

 

〇管理費滞納に対する制裁行為

5.■管理費滞納と浴場使用禁止措置 東京地判 平28年3月1日
概要
①本訴:管理費等(約247万円)を滞納した区分所有者(被告)に対する管理費等の請求を全額認容した
②反訴:管理費等を滞納した被告に対する地下1階浴場(共用部分)の使用禁止措置が不当行為に該当しないと認定した

4.■未払い管理費継承人に入館パスカード不交付訴訟 東京地判  平26年9月2日
概要
①前主による多額の滞納金がある場合に、競売取得による特定承継人(原告)と管理組合法人(被告)との当該債務につき合意が終わるまで、入館パスカードを原告に交付しないとする規約に基づいて、原告に入館パスカードを交付しないことにつき、原告が不法行為として被告に損害賠償を請求した
②棄却された

3.■管理費滞納者名の公表 東京地判 平26年7月16日
概要
①管理組合法人が区分所有者である2社に対して延滞管理費等の支払いを求め、2社より売買により取得したYセンターに対しても特定承継人に該当するとして承継した分を含む滞納管理費等の支払いを訴訟
②2社よりマンションの玄関ドアのオートロックをブロックし、マンション内に6ヶ月以上の管理費滞納者として実名を掲示したと管理組合法人を不法行為にもとづく損害賠償および玄関オートロックのブロック解除を求めた反訴した
③管理組合法人の請求を全て認容し、反訴請求を棄却した

2.■管理費未払いで水道使用停止は不法行為 平9年5月7日 福岡地裁小倉支判
概要
①理事長らが管理費の支払いを求めて、滞納者の水道元栓を3回にわたって閉栓(給水を止める措置等の嫌がらせ)等した行為
②不法行為責任を構成し、損害賠償責任を認めた

1.■管理費滞納者に対する専有部分の使用禁止請求を却下 平14年5月16日 大阪高判
概要
①管理費等の滞納(約1190万円)者に対する専有部分の使用禁止請求(58条1項)
②滞納は共同の利益に反する行為に該当するが、使用禁止認められない
(競売も考えられ、使用禁止請求は滞納解消とは関連性がない)

 

〇管理費滞納訴訟 その他①

8.■2つのマンションを1つにした新築マンション管理費用負担 東京地判平27年9月30日
概要
①原告マンションの容積率を増やし、被告マンションの専有部分を広げること等を目的として両方で一棟の建物として建築されたマンションで管理費用や修繕費用を被告マンションが支払わなかったことから争いになった
②費用負担契約に基づき原告86%対被告14%であることの確認と、原告の費用負担で原告マンションに新設した玄関を被告マンションの住民が使用する権利を認めることはできないとした※H29.1.25東京高判で一部変更

7.■リゾートマンションの管理費未払い訴訟 東京地判 平27年12月9日
概要
①リゾートマンションの区分所有者の学校法人が温泉施設等を学生等不特定多数の者に使用させたことは、保養施設としての利用方法から逸脱しているとして、管理組合(原告)から利用の中止を求められたことから、管理費等の不払いを行ったため、管理組合が未払い管理費や弁護士費用等の支払いを請求した
②支払い請求等を認容した

6.■管理費支払い義務と占有部分の使用収益関係 平26年4月24日  東京地判
概要
①管理経費の支払義務は現実にその専有部分を使用収益しているか否かに関係ない

5.■管理費滞納による強制競売の弁済金供託と弁償訴訟 東京地判 平28年1月20日
概要
①Aの長男が同長女に遺留分減殺請求訴訟を提起して、勝訴判決を得てマンションにつき共有持分移転登記請求権を取得したが、長女の管理費の滞納によりマンションが強制競売により売却され、執行裁判所が長女に交付すべき弁済金を供託したため、原告が長女に求めた民法1040条~1041条の類推に基づく弁償等の請求
②認容した

4.■管理費未納者への仮執行宣言付支払督促認可 東京地判 平27年8月10日
概要
①区分所有者の管理費等未払いに対し、管理組合(原告)が請求した仮執行宣言付支払督促(東京簡裁)を認可して、管理費等の支払いを命じた

3.■店舗所有者の管理費滞納 東京地判 平26年9月22日
概要
①管理組合(原告)が滞納管理費等の請求をしたのに対し、区分所有者(店舗所有者)が電動シャッターの電気料金を管理組合において負担するよう反訴した
②管理組合の請求を認容し、反訴については電動シャッターが共用部分であることを確認する限度で一部認容した

2.■管理費滞納と事務管理 東京地判 平26年11月25日
概要
①管理組合(原告)が滞納者(被告)に対し未払い管理費等(約134万円)の支払いを請求
②別途工務店に依頼した工事(1~6)代金は原告のために行ったもので、有益費償還請求権(民法702条1項)を有するとして被告が相殺を主張した事案
③多くの工事は共用部分でないため原告の事務管理に当たらず、残りの共用部分も独自に工事したものとして、現存利益のみ相殺を認めた

1.■管理組合に代位して損害賠償請求と当事者能力 東京地判 平27年6月25日
概要
①65.4%の共有持分を有する被告会社(区分所有者)が管理費等を支払わないとして原告ら(区分所有者で12.9%の共有持分)が保存行為又は管理組合に代位して損害賠償請求等した事案
②管理組合を権利能力なき社団と認定し、個々の区分所有者には当事者能力がないとして却下した
(区分所有者が違反区分所有者を除く区分所有者の全員または管理組合法人を代位して、裁判上の措置の各請求権を行使することができない)

 

〇管理費滞納訴訟 その他②

9.■滞納管理費請求訴訟 東京地判 平28年2月12日
概要
①管理組合が区分所有者らに管理規約に基づき管理費等に対する遅延損害金及び弁護士費用(本件訴訟に関するものと、和解で終了した前訴に関するもの)の支払いを求めた
②管理組合の控訴を棄却された

8.■滞納管理費(約347万円)訴訟 東京地判 平28年4月14日
概要
①管理組合が区分所有者に請求した、滞納管理費(約347万円)の支払いに係る請求原因事実を被告が全て認め、原告の主張を認容した

7.■滞納管理費の追加訴訟 東京地判 平27年12月17日
概要
①管理組合が区分所有者が滞納した管理費等(請求書№1~64分)の支払い請求した
②請求書№1~37分(前回請求部分)についてはH25.10.1川口簡判で請求を認容し確定していることから、現時点で再訴を提起しなければ得られないような利益(訴えの利益)はないとして却下し、請求書№38~64分(追加請求部分)と弁護士費用の請求については認容した

6.■未払い管理費等請求 東京地判 平27年8月24日
概要
①区分所有者(控訴人)が、管理組合の 1)未払い管理費等 2)廊下の消火器を自室に持ち込んだ価格相当額等の支払い請求を認容した原審(詳細未確認)を不服として控訴した
②理由がないとして棄却された

5.■滞納管理費等の支払い請求 東京地判 平27年5月12日
概要
①管理組合が区分所有者(被告会社で、故人である代表者は管理組合の管理者でもある)に対し、1)未払い管理費の支払いの他 2)無断で設置した自販機からの不当利得 3)無断で共用部分を店舗に改装して得た不当利得 4)無断で駐車場を第三者に賃貸して得た不当利得の返還等を請求した
②1)の時効消滅を含めいずれも棄却された

4.■管理費未納訴訟 横浜地判 平27年5月22日
概要
①管理組合が、区分所有者に対し、未納管理費等の支払いを求めた(本訴)
②被告が原告に対して、管理義務違反があったとして債務不履行による損害賠償金との相殺を請求した(反訴)
③原告の請求が認容された

3.■滞納賃貸料の連帯保証訴訟 平26年5月12日  東京地判
概要
①法定更新後の滞納賃料等も連帯保証したとして、賃貸人が保証会社に対し行った支払請求を認容

2.■未払い管理費と修繕積立金請求 平26年9月9日 東京地判
概要
①管理組合の管理者が、区分所有者に対し請求した、未払の管理費および修繕積立金の支払と、謄写目的で貸与した管理規約(原本)の引渡しを認容した

1.■管理費滞納支払い訴訟 平26年1月30日 東京地判
概要
①管理費等(約326万円) 滞納区分所有者に管理組合の支払い請求を容認
②管理組合が共用部分の修繕(漏水)義務を怠ったため自室を賃貸できず損害を被ったとして、損害金の支払いを滞納被告が求めた反訴請求で、前所有者が改修工事を受け入れず放置された等として管理組合の修繕義務を認めず棄却した

 

〇管理費価格設定妥当性訴訟

11.■事務所使用の管理費2倍の管理規約の有効性訴訟 東京高判 平28年5月19日
概要
①事務所使用の管理費を2倍とする管理規約が適用される旨主張して、管理組合が未払い管理費等を請求したが、反訴事件で、規約の規定が無効であるとして既払いのうち過払い分(約409万円)等の返還を求めた
②返還の主張を認容したH27.12.17東京地判を大筋で支持し(共用部分の使用頻度が居住用物件より高いとはいえない)、理事会決定による「2倍ルール」は区分法30条3項の規定に反し無効と認定(原審と異なり、規約の無効性は否定)

10.■店舗管理費が住居の2.45倍で高すぎると訴訟 東京地判 平28年5月30日
概要
①マンションの店舗の現・元区分所有者(原告ら)が、管理組合法人(被告)に対し、管理費等の徴収が住戸部分の約2.45倍であった(区分法19条違反)として差額の不当利得返還を請求した
②一部認容、一部棄却した(2倍を超える額を定める部分については無効と判示
③→控訴審(平29.1.25東京高判) で逆転し、無効でないとされた

9.■総会による管理費増額決議の有効性 東京地判 平27年8月21日
概要
①管理組合が、複合型マンションの一部である店舗の区分所有者(敷地の一部の所有者でもある)である被告に対してのみ、総会決議により変更した(管理費の増額と新たな修繕積立金の負担)管理費等(合計約1042万円)と遅延損害金の支払いを求めた
②本件決議は、被告の権利に「特別の影響」を及ぼし無効であるとして棄却された

8.■管理費が高すぎると過払い返還訴訟  神戸地判 平27年2月10日
概要
①住宅に比べて管理費が4.75~8.7倍と高すぎるとして、店舗区分所有者達が管理者(新長田まちづくり)に過払い分を求めた
②衡平に反しないとし、棄却された→H29年3月28日大阪高判でも支持

概要
①本件提訴に伴い、管理費等を支払っていなかった区分所有者に管理者が請求した
②判決(H26年7月23日神戸地判)で、滞納者に管理費等の支払を命じた

7.■管理費改定が高額だとの訴訟 東京地判 平27年6月10日
概要
①30年間増額していなかった管理費の改定(月9400円→11600円)決議が高額であるとして、原審(東京簡裁H25(ハ)24678)で敗訴した区分所有者が控訴した
②棄却された ※管理費等請求控訴事件、管理費等請求附帯控訴事件

6.■管理費過大で不当利得であるとの訴訟 東京地判 平27年5月18日
概要
①被告会社からマンションの1階部分を借用して料理店を経営している原告が、管理費が過大に徴収され管理組合の不当利得となっているとして、被告に管理組合や仲介業者等を含め不当利得返還請求等を行った
②棄却された

5.■店舗部分管理費の価格設定の妥当性 平26年3月27日 東京地判
概要
①店舗部分は、住居部分と比較して一般的に来場者が多く、多くの人が共用部分を利用することから、管理費等を比較的高めにすることも合理的理由がある、住居部分の1.4倍程度の管理費の定めが無効とはいえないとした
②管理費等の不払い額が96万円で59条競売請求を肯定(被告の非協力的態度が考慮要素となる)

4.■店舗区分所有者による管理費が高いと訴訟 平26年7月23日  神戸地判
概要
①住宅に比べて管理費が4.75~8.7倍と高すぎるとして、店舗区分所有者達が管理者(新長田まちづくり)に過払い分を求めている事件(H27.2.10神戸地判で棄却)に際し、提訴に伴い管理費等を支払っていなかった区分所有者に管理者が請求裁判
②滞納者に管理費等の支払を命じた
③※28.1.27 大阪高判で逆転した(マン管新聞2016.2.15)

3.■法人と個人の管理費の設定比率の違い有効性訴訟 平2年7月24日 東京地判
概要
①法人と個人の管理費等に床面積割合とは無関係に差異(最大1.72対1)を設けた規約は無効との訴訟と
②法人に対し合理的限度を超えた差別的取扱(法人組合員に不利益な結果をもたらす)であり、民法90条(公序良俗)の規定に違反し無効である

2.■店舗の管理費 1.4倍は有効 平26年3月27日  東京地判
概要
①店舗の管理経費について、住居部分の1.4倍程度の定めが無効といえない

1.■不在組合員の協力金支払規約改正 平22年1月26日  最三小判
概要
①不在組合員への協力金支払規定(月額2500円)の設置の規約改正
②管理費用の15%に過ぎず相当な金額であり、特別の影響を及ぼす場合にあたらないとして認容した

以上